はじめに

安定した雇用、柔軟な働き方、仕事のやりがい……。「魅力のある企業」とは、どんな企業を指すのでしょうか。

総合人材サービス会社のランスタッドが「エンプロイヤーブランド・リサーチ 2018 ランスタッドアワード」の調査結果を発表しました。

このリサーチは、世界共通の基準で企業の魅力度(エンプロイヤーブランド)を測る大規模な調査です。2000年にベルギーで始まり、現在はイギリス、中国、シンガポールを含む約30の国と地域で年1回実施されています。

発表会では、調査結果で上位に選出された企業が「勤務先として人材を引きつける魅力のある企業」として表彰されました。2012年にスタートし、今年で7年目を迎える日本の表彰式。勤務先として評価されたのは、どの企業なのでしょうか。


パナソニックが初の1位受賞

2月27日に都内で開かれた「エンプロイヤーブランド・リサーチ 2018 ランスタッドアワード」。会場の照明が暗転し、一瞬静まり返った空気の中、総合1位として発表されたのはパナソニックでした。調査対象となった日系企業180社の中から選ばれました。

同アワードが開催された初年度に第3位を受賞して以来、毎年上位にランクインしてきた同社。「興味深い仕事がある」「革新的な技術を活用している」「社会的評価が高い」といった指標で高い評価を得て、今回、初の1位を受賞しました。

「財務体質が健全である」「長期にわたる安定した雇用機会がある」「社会的評価が高い」の各指標で1位を獲得したトヨタ自動車が、昨年に続き2位に入りました。

3位は、昨年1位に選ばれた日清食品ホールディングス。同社は今年、世界初の即席麺である「チキンラーメン」を発明して60周年という節目の年を迎えます。「興味深い仕事がある」という点で高く評価され、また「食品・飲料」の業界別ランキングでは、味の素やサントリーを抑えて、1位を受賞しました。

存在感を高めた企業はどこ?

昨年の10位から大幅なランクアップを遂げたのは、5位の味の素です。2017年4月から所定労働時間を20分短縮したり、毎週水曜日を定時退社デーとして17時に消灯するなど、ワークスタイルの変革を行ったことが影響してか、「職場環境が快適である」「ワークライフバランスが実現しやすい」点が高評価を得ました。

初のトップ10入りを果たしたのは、教育訓練が充実している点が評価され7位に選出された日本航空と、10位にランクインした楽天。楽天は「情報通信・サービス業」のランキングで、NTTドコモやKDDIを抜いての1位でした。

外資系企業30社の中から選ばれる海外企業部門では、日本コカ・コーラやジョンソン・エンド・ジョンソンを抑え、初めてアップルが第1位を獲得。「革新的な技術を活用している」点が高く評価されました。

第3者機関による世界基準で調査

「本調査は、よくある人気企業ランキングのように、就職活動をしている学生だけを対象としたり、大都市圏のホワイトカラーのみを対象とした調査ではありません」と、プレゼンターを務めたランスタッドの青木秀登執行役員は話します。

では、ランキングはどのようにして抽出されるのでしょうか。

調査を行うのは、同社から委託された独立した第三者機関。世界で共通の基準を用いて厳正な調査に基づき、表彰対象を決定しているそうです。

回答者は、人口分布図にできる限り添うように全国から任意に選出された18歳から65歳までの一般の男女7,105名。回答者は、調査対象である国内における従業員数上位の企業の中から、自分が知っている企業を選択。次に、その選んだ企業に勤めたいかどうかを5段階評価で回答します。

社名を「知っている」と答えた回答者の合計に対して、その企業で「働きたい」(5段階評価のうちの「5.ぜひ働いてみたい」と「4.働いてみたい」)と回答した人の合計がどれだけいるかを弾き出し、数値の高い企業を表彰します。

また、以下の「10の指標」による分析を行い、各企業のどの点がより魅力的なのかを明らかにします。

【10の指標】
・給与と福利厚生が充実している
・長期にわたる安定した雇用機会がある
・キャリアアップの機会がある
・職場環境が快適である
・財務体質が健全である
・革新的な技術を活用している
・環境や社会に配慮している
・社会的評価が高い
・興味深い仕事がある
・ワークライフバランスが実現しやすい

重要視するのは「給与水準と福利厚生」

今回の調査で、勤務先として魅力的な業界の1位に選ばれたのは「食品・飲料業界」でした。10ある指標のうち、「財務体質が健全」「安定した雇用」「環境や社会に配慮している」といった7つで1位になりました。日本では毎年、食品・飲料業界の人気が高く、2013年から5年続けて総合1位を獲得してきました。

また同リサーチでは、働き手が勤務先選びで最も重要視している条件が「給与水準が高く、福利厚生が充実している」であることが明らかになりました。次に「職場環境が快適である」「長期にわたる安定した雇用機会がある」「ワークライフバランスが実現しやすい」といった項目が続きます。

一方、トップ5には入っているものの、「興味深い仕事がある」は2017年に20%近くまで支持が落ち、重要度が低くなっている傾向にあるそうです。テレワークやサテライトオフィスなど柔軟な働き方が広まったことで、2016年までは40%以上の支持があった「就業場所の利便性」に対する重要度も10ポイント下がったそうです。

人手不足が常態化する中で、多くの人が魅力的な企業の条件として、安定した給与や雇用、職場環境の快適さを求める傾向が強まっています。働き手にとって、仕事の待遇や環境がいかに切実な問題なのかが浮き彫りになった結果となりました。世界経済の先行きに不透明感が漂い始める中、安定志向の高まりはこの先もまだまだ続きそうです。

(文:編集部 土屋舞)

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