はじめに
旬の野菜をおいしく食べる——それだけで、生活はより豊かになります。
野菜の旬がいつなのか、おいしく食べるための賢い選び方や、上手に保存するためのひと手間について、日本野菜ソムリエ協会認定の野菜ソムリエ・日々野志麻さんに教えてもらいました。
今回の野菜は、そのままでも、炒めても、煮てもおいしい「トマト」。その見極め方をご紹介します。
トマトがおいしい季節は“夏”じゃない?
各地でさまざまな品種が栽培できるようになり、最近では一年中手に入るようになったトマト。
収穫時期によって、ハウス栽培の「冬春トマト」と、自然に近い環境下で育てる露地栽培の「夏秋トマト」の大きく2つに分けられます。
日本では昔から“夏の野菜”として親しまれているトマトですが、本来は高温多湿の気候には適していません。そのため、真夏のトマトは味的にはベストとはいえないのです。
甘く濃厚な味を楽しみたいのであれば、冬の寒さのなかで時間をかけて作られた春のトマトがおすすめです。
トマトを選ぶときのポイント5つ
おいしいトマトを選ぶ際は、5つのポイントに注目して選ぶと良いでしょう。
①均一した色合いで傷や白い斑点がないもの :トマトの白い斑点はトマトが呼吸する「気孔」という穴で、多いほど甘味や旨味が逃げやすく、味も薄いため水っぽい食感になりがちです。
②丸みのある形、重みがあるもの :手で持つと重みを感じるトマトは、果肉に甘味があり、実が詰まっている証拠です。
③あまり熟しすぎず張りがある硬さのもの :完熟しすぎると食べ頃を逃してしまいます。
④ヘタは凹んでいてガクが反り返り、折れていないもの :鮮度を見極めるためにガクのチェックを忘れずに行いましょう。
⑤おしりの部分に星型の放射線があるもの :おしりの部分にある星の形の放射線は糖度があるしるしです。
選び方のポイントを押さえて、同じ値段でも、より良いトマトを選びましょう。
直売所や産地直送のお店、マルシェなどに足を運ぶと、より新鮮でお気に入りのトマトを見つけることができます。生産者の方とのお話も楽しいひとときです。
トマトの追熟方法、冷凍保存はできる?
購入から2~3日後に使いたい時は、全体的に赤すぎず少し緑色が残るトマトをあえて選び、常温で追熟させましょう。
トマトのヘタを下にして追熟させます。その後は、同様に冷蔵庫の野菜室へ。夏場は追熟が早いので常温保存には気をつけましょう。
トマトの賞味期限は購入してから1週間程です。トマトは乾燥すると鮮度や味が落ちるため、すぐに食べきれない場合は、ラップに包み、この時もヘタを下にして冷蔵庫の野菜室で保存します。
トマトソースやスープなど調理用に使うのであれば、冷凍保存もおすすめです。トマトをよく洗い、水気をふき取ってラップで密封後、ポリ袋やZIPロックに入れて冷蔵庫の冷凍室へ。1ヵ月を目安に使い切りましょう。
加熱するとリコピンの吸収率がアップ
トマトの栄養素として注目されている「リコピン」は、果肉よりも皮に豊富に含まれています。一方、ゼリー状の種の部分には、水溶性食物繊維の一種「ペクチン」や、旨味成分「グルタミン酸」が含まれています。栄養面では、皮と果肉を分けずに、丸々食するのがおすすめです。
また、リコピンは油に溶けやすい性質があるため、生で食べるよりも、油で加熱料理した方が吸収率が高まります。
身体を老化させる原因になる活性酵素を取り除き、強い抗酸化作用のあるリコピン。そのパワーは、高い抗酸化作用を持つビタミンEの100倍といわれています。
調理方法を工夫して、加熱したトマトを食生活に取り入れましょう。
トマトと相性のいい食材は?
トマトに含まれる旨味成分「グルタミン酸」は、干ししいたけのうまみ成分「グアニル酸」と合わせると、味わいが深くなるので、お味噌汁やスープなどの具材にするとよいでしょう。
また、ハイビスカス&ローズヒップのハーブティーとトマトを組み合わせたジュースもおすすめです。ハーブティーのビタミンCと、トマトのβ―カロテンを組み合わせることで、免疫力を高め、美肌効果が期待できます。