はじめに

「身体はくたびれたおっさんなのに、目を閉じると若い女の子の匂いに包まれている」――。こんな奇妙な「変身」体験をつづったブログ記事が話題になっています。男性に女の子の香りを与えたモノの正体は、ロート製薬の販売するボディソープ「デオコ 薬用ボディクレンズ」です。

本来は女性の「加齢臭」ケアを目的に開発された商品ですが、「男性でも女の子の香りをまとえる」とネット上で反響。ドラッグストアでの売り上げも急上昇しています。デオコを販売しているロート製薬に、どのような仕組みで「女の子」の香りを付加しているのか、話を聞きました。


ドラッグストアからデオコが消えた?

ロート製薬が「デオコ 薬用ボディクレンズ」(実勢価格1,000円、税別)を発売したのは2018年3月。それから1年以上経ってネット上で話題に火がついたのは、あるブログ記事の投稿が発端でした。

書評サイト「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」による「リアル君の名は。おっさんが女の子の匂いを買ってきて身につけたら、たまらない背徳感を味わえた」という強烈なタイトルの体験記事が公開されました。

この記事がネット上で拡散されると、公開から1週間で「デオコ」という単語を含むツイートの数が約5,000も増加。さらには、Amazonの売れ筋ランキングのボディソープカテゴリ1位に躍り出て、一時は各種オンラインショップから在庫がなくなりました。

デオコの売上推移
デオコのドラッグストアにおける売上推移(データ提供:True Data)

調査会社True Dataの提供するPOSデータを見ると、ドラッグストアにおけるデオコ(詰め替えやお試し品を含む)の売り上げは、前述のブログ記事が公開された2019年5月20日週から急上昇しています。買い物客100万人当たりの売り上げを示す「買い物指数」は、5月27日週に過去最高を記録しました。

デオコを使ってみた

デオコの購入者属性は、30代女性(17%)、40代女性(35%)、50代女性(25%)と、中高年女性が大半を占めます。ところが5月のデータを取り出すと、ブログの影響のせいか、男性購入者の割合が他の月と比べて約3ポイント増加しました。

記者が5月に都内のドラッグストアで探したところ、在庫切れの店舗が多く、購入できたのは4店目。使用してみると、一般的なボディソープと比べてトロリとした質感で、フローラルな香りがするものの、体を洗っても特段「女の子の香りになれる」印象はありません。

しかし、変化を感じられたのはその後。浴室を出るとピーチのような甘い香りが、火照った体からふわっと立ち上ります。普段の体から出てこない香りで不思議な感覚ですが、人工的でわざとらしいにおいではありません。使い始めてから1週間もすると、甘い香りに包まれている自分に慣れてきました。

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