はじめに

子どもたちの夏休みも終盤に入りましたが、「子どもがずっとスマートフォンを見ている」と悩んでいる保護者も多いのではないでしょうか。子どもがスマホやパソコンを長時間利用することの弊害は、以前から指摘されています。

国立成育医療研究センターが、親子関係と子どものインターネット使用に関して、約2,000人の子どもたちの意識調査を分析した研究成果を発表しました。その結果、親子関係が良くないと感じている子どもほど、インターネットを長時間使う傾向にあるということがわかってきました。


家族といるのが楽しくないと…

国立成育医療研究センターで社会疫学を研究する加藤承彦室長らは、親子関係とインターネット利用に関するデータを分析しました。このデータは、2017年に国立青少年教育振興機構が実施した意識調査で、20 都道府県の小学校 5 年 生から中学校 2 年生までの約 2,000 人にさまざまな質問をしています。

その結果わかったのが、家族と一緒にいるのが楽しくないと感じる子どもは、休日にインターネットを長時間使う割合が大きいということ。分析結果によると、「家族と一緒にいるのがとても楽しい」と回答した子どものうち、ネットを5時間以上使用していた割合は13%。「家族と一緒にいるのがまあ楽しい」と答えた子どもでは、25%でした。

ところが、「あまり楽しくない」と答えた子では、その割合が29%と上昇。「楽しくない」という子では、41%にまで上りました。

別の角度から分析すると、家族といるのが「楽しい」と答えた子どもと、「楽しくない」と答えた子どもでは、休日にインターネットを長時間使う割合が2倍以上の開きがありました。この結果からは、休日に家族と楽しい時間を過ごせない子どもが、部屋にこもって長時間スマホをいじっている、という状況が浮かび上がります。

親の使い方を子どもは見ている

さらにこの調査では、親の態度と子どものネット使用の時間に関係があることもわかりました。

「(自分の)親は携帯電話やスマートフォンを使用しながら私と話す」という質問項目で、「よくある」と答えた子どもたちでは、「ほとんどない」と答えた子どもたちより、休日にインターネットを長時間使用する割合が1.6 倍も大きい状況でした。

さらに、「よくある」と答えた子どもたちは、睡眠不足になっている割合も大きいこともわかりました。「ほとんどない」と答えた子どもたちに比べ、睡眠不足を経験した割合が3倍も大きかったのです。

ほかにも今回の研究からは、インターネットを使い始める年齢が早いほど、その後に長時間使用したり、睡眠不足になったりする割合が大きいこともわかりました。親が、子どもと会話しながらスマホを触ったり、幼いうちからスマホを与えたりすることが、その後の子どもの使い方に影響を与えるといえそうです。

家庭でスマホ使用のルールを作っている?

今回の研究では、家庭でスマホ利用のルールを設けていない家庭ほど、このような子どものネットの長時間利用や睡眠不足が起きやすいこともわかりました。

分析をした加藤さんは、「スマホを使っていい時間や場所などのルールを設けていない家庭では、子どもは自由に、長時間スマホを使ってしまう傾向があります。さらに、そういう家庭では、親も会話中にスマホをいじることが多いといえます」と指摘します。

スマホなどを通じたネットの長時間利用が子どもに睡眠不足やうつ病を引き起こす可能性があることは、すでに他の研究でも言及されています。日本小児保健学会などはスマホやタブレットが子どもに悪影響を及ぼすことを防ぐため、「端末は親が管理すること」「適切な使い方を親子で話し合い、ルールを決めること」などの提言を行っています。

「子どもだけでなく、親も節度あるインターネットの使い方をすることが大切。夏休みこそ、家庭での使用ルールをしっかり決めるべきでは」と加藤さん。子どもが無秩序にネットを利用すれば、親が負担する通信費もバカになりません。残り2週間ほどとなった夏休み。親に残された“宿題”について考えるには、十分な期間ではないでしょうか。

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