はじめに

取りに行くのを忘れて、そのままにしているクリーニング。

引き取られずに年々増える放置品にクリーニング店は頭を悩ませています。なかには50年間預けられっぱなしの洋服も。

そんななか、そうした放置品の心配がない新しいクリーニングサービスが注目されています。


最長50年も、クリーニング店の9割にある長期放置品

全国で約7,500の事業主が加入している、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会は、仕上がり予定日を過ぎても引取りがない長期間放置品について調査を実施。

その結果、およそ9割のクリーニング店に、仕上がり予定日を過ぎても数ヶ月から1年以上引取りがない放置品があることが明らかになりました。

そもそも、なぜこのような調査を行ったのでしょうか。全ク連の広報担当者に聞きました。

「以前から組合員のなかで長期間放置品について困っているという声があがっていました。法的解決策を模索するため、まず放置品がクリーニング店でどれくらいあるのかという実態調査を行いました」

もっとも長く預かっている放置品について聞いたところ、「3~5年未満」が23.2%ともっとも多く、最長の「25年以上」と回答した店舗は5.9%にも上りました。

「25年以上」と回答したなかには、なんと50年も引取りに来ない放置品を抱える店舗が2~3件あったそうです。

「『25年以上』と回答していても、具体的な年数について記述がなかったものもあるので、50年級の回答がもっと含まれている可能性があります」と広報担当者。

長期にわたり保管する、店側の涙ぐましい努力

引取りのない放置品が増えるにつれて、クリーニング事業者の頭を悩ませているのが、保管スペースの確保と保管中のトラブルです。

長期間放置品があると答えた8割の店舗が、保管スペースの賃料・経費などを含め、その確保に負担を感じているにもかかわらず、9割以上は保管料を請求していないと回答。なかには「保管料を請求したが、支払ってもらえなかった」という意見も。

さらに、長期間の保管によってトラブルが発生し、『20年間保管したが、色あせ、カビの発生等、これ以上は保管できなくなり処分した』といった声も寄せられています。

そうしたトラブルは、預けてから90日以上経過した後に発生している場合、店側に責任は生じないと広報担当者。

「クリーニング事故賠償基準の第6条2項によって、利用者の方の都合でお店に90日以上預けたままになっている衣類は、虫食いや変色などが発生しても店側に責任は生じないことになります」

それにもかかわらず、店側は涙ぐましい努力を続けます。

「個々の事業者によって店舗規模が異なりますが、放置品のために店舗とは別に倉庫を借りたり、夏場は冷房をつけっぱなしにしている、という話も聞きます」(広報担当者)

注目されるネット完結型の宅配サービス

放置品が問題になる一方、そうした心配が不要な新しいクリーニングサービスが注目されてます。

ネット完結型の宅配クリーニングのリネットを運営するホワイトプラス広報の長瀬さんは、次のように話します。

「当社では、お客様からお預かりしたお洋服をクリーニング後に、ご自宅まで宅配でお届けします。店舗のようにお客様が受け取りに行く必要がないため、受け取り忘れなどが起こることはありません。そのため、放置品が発生することもほとんどありません」

2009年の創業以来、利用者は増え続け、今年の5月には25万人を突破。同社はクリーニングだけに留まらず、最大8か月の保管付きサービスも提供しています。

「アパレル企業が実際に使っている、衣類に最適な保管環境で保管し、お客様にはご自宅のスペースを有効にご活用いただけます。こちらも保管期間終了後はお客様のご自宅まで宅配にてお届けしますので、受け取り忘れなど放置品は発生しません」

“つい、うっかり忘れてた!”が、クリーニング店に負担を強いている長期放置品の問題。そうした、新しいサービスが解決の糸口になるのかもしれません。

(文:編集部 土屋舞)

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