はじめに

クリスマスまであと1ヵ月。全国各地でクリスマスイベントがスタートしています。中でも大きな注目を集めるものの1つが、今年銀座に開業した大型商業施設「GINZA SIX」です。

11月16日から始まっている初のクリスマスイベント「GINZA SIX CHRISTMAS 2017」の点灯式には、石原良純さんと道端アンジェリカさんがゲストとして登壇しました。ヨーロッパの街並みをジオラマで再現した2階の三原テラス「Snow Dome City」では、土日祝日に本物の雪を積もらせ、スノーマンが姿を現す仕掛けを施しています。

なぜGINZA SIXが注目なのかといえば、一流ブランドの路面店が軒を連ね、百貨店がひしめき合う銀座にありながら、開業から半年が経過した今も、順調な客足を維持しているからです。同施設が快進撃を続ける理由をひも解きました。


流行語大賞にもノミネート

“脱百貨店”を標榜し、今年4月に開業したGINZA SIX。初年度は来場者数2,000万人、売上高600億円を目指していて、これまでのところ、計画通り順調に推移しているといいます。この年間売上高は、2016年度の大丸梅田店に匹敵する規模です。

運営会社であるGINZA SIXリテールマネジメントの岩原佳乃子プロモーション部長は「開業景気が落ち着いた現在も客入りは順調で、本物志向で購買意欲の高い人が多い」と話します。

同施設は銀座6丁目にあった松坂屋銀座店の跡地と隣接する2街区を一体で再開発した、銀座エリア最大級の施設面積4万7,000平方メートルを誇る複合施設です。大丸松坂屋を運営するJ.フロントリテイリング、森ビル、L キャタルトン リアルエステート(LVMHグループ)、住友商事という4社の共同出資で誕生しました。

2017年ユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされたほか、椎名林檎さんとトータス松本さんがデュエットしたテーマ曲「目抜き通り」が広告賞を受賞するなど、業界では今年最も勢いがある商業施設とささやかれています。

全241店舗のうち、半数以上が旗艦店(どこよりも早く仕入れ、どこよりも豊富な品ぞろえを誇る店舗)として出店。従来の百貨店のようにフロアごとに世代や性別を分けるのではなく、ブランドの世界観を大切にした店づくりを展開しています。

草間彌生≪南瓜≫ ⓒYAYOI KUSAMA 吹き抜けに飾られた草間彌生さんによるインスタレーション

2~5階の吹き抜けに飾られた芸術家・草間彌生さんによるインスタレーション、日本の伝統文化を発信する能楽堂、朝7時から開放される屋上庭園など、アートと文化を取り入れた複合施設として“脱百貨店”を表現しています。

インバウンドが売り上げを牽引

幅広いカテゴリーを扱う同施設の中でも、高単価の「服飾品や宝飾品などのラグジュアリー商品が想定以上に好調です」と岩原さん。その売れ行きを牽引するのが訪日外国人客だといいます。

日本政府観光局によると、7月の訪日外国人客数は約268万人。前年同月よりも16.8%増え、月間で過去最高を更新しました。時を同じくして「GINZA SIXの外国人客の客足も目に見えて伸びた」と岩原さんは話します。

さらに購入の後押しになっているのが、100円につき1ポイント、1,000ポイントで1円として還元される同施設オリジナルのアプリです。クレジットカードを作るよりも手軽で、今ではアプリ会員の10%が外国人客だといいます。

ラグジュアリーブランドもアプリに加入しており、還元率が1%でも高額商品を購入するとその効果は大きくなります。そのためか、外国人客でもラグジュアリーブランドのリピーターになる顧客が多いそうです。

資生堂やコスメ・デ・ボーテといった国内のブランド化粧品も外国人客に好評で、当初、全体に占める外国人客の売り上げは20%を想定していましたが、現在は30%が外国人客によるものとなっています。

成功の秘訣はどこに?

「ラグジュアリーブランドの世界観を出している、新しい百貨店。ローカルでは通用しない、銀座ならではの見せ方だと思います」と分析するのは、オチマーケティングオフィスを経営する流通コンサルタントの生地(おち)雅之さん。

生地さんによると、もともと銀座に構えていた路面店をGINZA SIXに旗艦店として移転したブランドは成功しているといいます。逆に「銀座に路面店を抱えているブランドは、GINZA SIXにある店舗と競合状態になって苦戦しているのでは」と推察します。

開業から半年以上が過ぎ、「一時は来客数が1日10万人切ったこともあるようですが、最近は戻ってきているとみられます」(生地さん)。その理由について、リピーターも含めた訪日外国人が増えていることが来客数の再ブーストにつながっているようだと指摘します。

将来的に、GINZA SIXは東京メトロの銀座駅と地下通路でつながる予定です。これが開通すれば「より行きやすくなり、客足がさらに伸びるのではないでしょうか。まだまだこれからだと思います」と生地さん。岩原さんも「本当に顧客をつけていけるかは、これからが正念場です」と話します。

銀座に新しい風を吹き込んだGINZA SIXが成功すれば、“脱百貨店”がこれからの銀座の百貨店のスタンダードになるのかもしれません。

(文:編集部 土屋舞)

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