はじめに

経済系のメディアで「フィンテック(Fintech)」という言葉を見ない日はありません。実際、最近1年間(2017年02月07日~2018年02月06日)にフィンテックという言葉を登場させた新聞記事の数は、日本経済新聞だけでも511件にのぼります。つまり日経では、計算上1日1記事以上のペースでフィンテックが登場しているわけです(参考:日本経済新聞社「新聞トレンド」)。

そんななか主にネットでは、フィンテックをもじった「貧(ひん)テック」という俗語も見かけるようになりました。グーグルで貧テックを検索すると、執筆時のタイミングで約1万件のページを発見できます。

貧テックという語形からは一見ネガティブなイメージも漂ってきますが、さて貧テックとはどういう意味なのでしょうか。言い換えると、ある種のフィンテックが貧テックと呼ばれるのには、どういう理由があるのでしょうか?


そもそもフィンテックとは?

まず話の前置きとして、フィンテックの意味について簡単に復習しておきましょう。フィンテックという言葉は、金融を意味するファイナンス(Finance)と、技術を意味するテクノロジー(Technology)の合成語。いわゆるIT(情報技術)と金融とを組み合わせて実現する新技術や新サービスを総称する言葉として使われています。少なくとも2003年に存在していた言葉ですが、メディアで盛んにこの言葉が使われるようになったのは2015年以降のことでした(参考:グーグルトレンドなど)。

ちなみにフィンテックが守備範囲とする金融分野はさまざまです。

例えば、預金や資産管理(銀行の口座管理アプリや、複数事業者の口座を一括管理できる家計簿アプリなど)、融資(クラウドファンディングや、P2P融資など)、送金や決済(モバイル決済や、個人間送金など)、資産運用(ロボアドバイザーなど)、保険(テレマティクス保険など)、金融インフラ(仮想通貨や、ブロックチェーンなど)といった具合に、あらゆる分野で技術やサービスの革新が進んでいるわけです。

理由その1:中途半端だから

そんなフィンテックをもじった貧テックという言葉。この言葉も、報道系メディアから一般人の書き込みに至るまで、幅広い場所で目にするようになりました。ひょっとしたら貧テックという言葉は「一度目にしたら自分でも使ってみたくなるタイプの言葉」なのかもしれません。

さてここで冒頭の問題に戻りましょう。フィンテックと称される新技術や新サービスのなかには、なぜ「貧テック」と称されるものが含まれるのでしょうか? 筆者の見立てでは、その理由は主に3つあります。

第一の理由は「フィンテックと称しながらも、実際には中途半端な取り組みに留まっているものが多いこと」ではないでしょうか。この意味の貧テックは経済系メディアの記事で見かけます。

例えば東洋経済オンラインの2017年10月2日付の記事「邦銀のITシステムは、いまだに『貧テック』だ」もそのひとつ。ここでやり玉にあがっているのは邦銀です。具体的には、邦銀によるフィンテック投資の多くが既存業務の効率化を指向しており、顧客の利便性を高める方向(すなわち革新的サービスを生み出す方向)ではないと憂える内容でした。

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