昨年10月22日に実施された衆議院議員総選挙で自由民主党が大勝すると、欧米の政権関係者から「今時、与党が大勝できるのは珍しい」と、うらやましがられました。「日本ほど、政権が安定している国は少ない」と見られ、同年10~11月は外国人投資家の日本株買いが増え、日経平均株価は大きく上昇しました。

ただし、そう考えられたのは一時的でした。学校法人「森友学園」への国有地売却に関する問題で、安倍晋三政権は再び窮地に立たされています。財務省が決裁文書を書き換えたことを認めたため、麻生太郎財務相と安倍首相の責任を問う声が強まっています。

外国人投資家は日本の政治動向に敏感です。自民党政権の安定性が強まる時は、「資本主義の構造改革が進みやすくなる」と判断して日本株を積極的に買ってきます。逆に、自民党の政権基盤が弱くなると、日本株を売ってきます。彼らは、このニュースをどう見ているのでしょうか。


海外投資家は内閣支持率に注目

海外の機関投資家は、さまざまなメディアから発表される日本の「内閣支持率」をよく見ています。過去の経験則では、支持率が40%を切ると日本株に「売り」、80%に近づくと「買い」で反応する傾向があります。

決裁文書の書き換えが発覚してから、まだ「内閣支持率が急落」という発表は出ていません。外国人は、まだ日本の政治不安をネタに日本株を売っているわけではないと考えています。

最近、外国人投資家による日本株の売り越しが続いていますが、それは円高がじりじり進んでいることを嫌気したものとみられます。今後、「内閣支持率急落」という発表が出てくると、改めて外国人の売りが増えると予想しています。

民主党政権誕生時は唯一下落

衆議院の解散総選挙は、外国人投資家が注目する重要イベントです。過去5回の解散総選挙前後の日経平均の動きを見たのが、以下のグラフです。

解散総選挙の後、自民党の政権基盤が強化された4回では、外国人の積極買いで、日経平均が上昇しています。特に、2005年(小泉政権時の郵政解散)と、2012年(アベノミクス開始)の解散総選挙では、外国人が「日本株を持っていないと大変なことになる」と必死に買ってきました。

選挙後に唯一下がっているのが、2009年の民主党政権誕生の時です。社会福祉や格差縮小を重視する政権は、外国人資本家の目では評価できなかったからです。

外国人の売りが増えるのはこれから?

私はこれまで、欧米の年金基金や、中東・アジアのソブリン・ウエルス・ファンド(政府系ファンド)の日本株担当者と、しばしば面談し、日本株の見通しについて、ディスカッションしてきました。

アベノミクスがスタートした直後の2013年には、外国人投資家が日本株を13兆円も買い越し、日経平均の大幅上昇を演出しました。この時、私は中東、中国、米国の機関投資家と会って、日本株の投資価値についてディスカッションしましたが、異口同音に彼らが語っていた言葉が印象的でした。

「社会福祉を重視する政党(民主党)から、資本主義を重視する政党(自民党)に政権が移ったから買い」――。外国人投資家は資本家の目で日本を見ているわけですから、資本主義の成長戦略を進める自民党が強くなれば「買い」、弱くなれば「売り」と判断するのは、当然です。

彼らは最近、米国や欧州、中国、北朝鮮などの政治動向を注視しています。特に、ドナルド・トランプ米大統領が保護貿易で暴走していることを、警戒して見ています。日本については、まだ「相対的に政治が安定している国」としか見られていないようです。

今後、内閣支持率が急低下し、日本の政治混迷が深まれば、外国人の売りが増える可能性があるので、注意を要します。

(写真:ロイター/アフロ)