はじめに

宅配便大手3社が相次いで配送料を値上げしました。それに伴って、販売価格を大幅に引き上げる小売りが増えています。

今回の配送料値上げは、商品の仕入れや配送を行う多くの業者にとって、まさに大打撃というべき問題なのです。特に、商品を顧客に郵送しなければならないネットショップは、厳しい状況に追い込まれています。

ネット通販を愛用している消費者は、どう対応すればよいのでしょうか。自分でもネットショップを経営する立場から、ネット通販の現状と対策について解説したいと思います。


家電やドリンクの通販を直撃

今回の配送料値上げは、多くの人に影響がある問題ですが、とりわけ打撃が大きいのは商品の配送を依頼する必要があるネットショップです。しかし、ネットショップが受ける配送料値上げの打撃は“平等ではない”という事をご存じでしょうか。

ネットショップと一口に言っても、利益率は販売する商材によって大きく異なり、販売価格に占める配送料の割合はそれぞれの店舗で全然違ってきます。利益率が特に低いのは、メーカー仕入れ商材などの家電やドリンクです。

家電はメーカーから仕入れて販売するので、最終利益率は5%以下になることも事も珍しくありません。また、ドリンクはお茶、水、コーヒーなどは「こんなに安くて儲けが出るのだろうか」と思うほどの低価格で販売されており、典型的な薄利多売ビジネスといえるでしょう。

なおかつ、家電やドリンクは大きさと重量があるので、配送料値上げの打撃をモロに受けるわけです。

では、その反対に利益率が高いのは、どんな商材を扱っているネットショップなのでしょうか。それは自社開発商品などのオリジナル商材を販売している会社です。

たとえば、化粧品や雑貨、スイーツなどの食品は軒並み利益率が高く、販売価格に占める配送料の割合がメーカー仕入れほど大きくありません。したがって、送料値上げのダメージは家電やドリンクのショップに比べて小さい、ということになります。

一斉値上げが平等でない理由

配送料値上げは大手3社で立て続けに実施されました。これにより、同じ商材を販売している競合同士であれば、打撃は平等という印象があります。しかし、実態はそうではなく、同じ商材を販売していても、打撃の度合いは異なるのです。

まず、物流会社と契約している配送料はショップごとに異なります。よりたくさんの荷物を配送するショップほど、スケールディスカウントを受けられるので、有利になるのはいうまでもありません。規模の小さい零細ショップであるほど、受けられる配送料のディスカウントが小さくなりますから、今回の値上げはよりダメージが大きいことになります。

また、同じものを販売していても、販売価格に占める配送料の割合が異なります。

たとえば、筆者は贈答用フルーツを販売しています。家庭用のフルーツを販売しているショップに比べて仕入れの原価は高いのですが、その分、高い値段で売れるので利益率は高くなります。売値に占める配送料の割合は家庭用フルーツよりも小さいので、今回の配送料値上げは家庭用フルーツ販売業者に比べて打撃は小さくて済む、というわけです。

小分けに買うより「まとめ買い」

筆者を含む各ネットショップは、配送料値上げを受け入れるほかに選択肢がありません。今回の配送料値上げは、EC市場の拡大と配送ドライバー不足という「起こるべくして起きた」問題です。今後さらに上がることはあっても、下がる可能性はおそらくないでしょう。

ネットショップ各店は最大限の企業努力をしているものの、どうしても販売価格の値上げや送料アップ、一定額を購入することで送料が無料となる条件を引き上げることは避けられません。この値上げに対して、消費者はどう対応したら良いのでしょうか。

配送料の値上げは、確実に消費者へ転嫁されます。そうなると、家計の負担が重くなるのは必至。100%回避することは難しいですが、ダメージを減らすことは可能です。

その1つの方法として「まとめ買い」があります。同じ商品を10回で小分けに買うよりも、半分の5回に回数を抑えるほうが、購入総額に占める送料を小さくすることができます。

また、「5,000円以上の購入は送料無料」といった送料無料条件の引き上げをするショップの増加が考えられますので、まとめ買いをすることで送料無料の条件に入る可能性を高めることも可能です。

セールや送料据え置き企業を活用

セール時期をしっかりと活用することも重要でしょう。ネットショップで販売している商品の価格は全期間で一定ではありません。仕入れが安く済む商品は、それだけ販売価格を下げても利益が出ますから、思い切った値下げのできるタイミングがあるのです。

同じものを買うなら、安く買えたほうがお得。「自分が買いたい時に買う」のではなく、「お店が販売したい時に買う」という発想を持つことで、セール品を手に入れることができるのではないでしょうか。

また、配送料一斉値上げ後も送料が変わらない通販業者もあります。アパレルのオンラインショッピングサイトであるZOZOTOWNは、昨年「送料自由」を提示して大きな話題を呼びました。この試験導入結果を受け、昨年11月1日から送料を「一律200円」にしています。

これについて、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイの広報担当者は「3月以降も配送料上昇に伴う値上げはなく、200円のままで抑えています」と言います。

ネット通販市場が拡大している今、配送料の値上げは私たちの生活に対して、これまで以上のインパクトを持つようになっています。それだけに、活用できる対策は採用し、今後も配送料と上手に付き合っていく必要があるのではないでしょうか。

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