『広辞苑 第七版』(2018年1月発売開始)で新たに登場した経済ワードを紹介する記事の後編です。

前編では、投資の言葉(外国為替証拠金取引)、経済史の言葉(サブプライムローン)、CSRの言葉(三方良し)を紹介しましたが、この他にどんな経済ワードが新登場したのでしょうか?


通貨の言葉「ビットコイン」

まずは、通貨関連のキーワードから観察しましょう。

広辞苑・第七版が新たに採録した言葉のうち、個人的に衝撃的だった言葉は「ビットコイン」(bitcoin)でした。同辞書は他の辞書に比べて、新語の採録に保守的なことで知られます。そんな辞書がビットコインのような新しめのキーワードを採録したことが、個人的には驚きでした。広辞苑はこのキーワードの将来性を買ったのかもしれません。

ちなみにビットコインは、数ある仮想通貨、あるいは暗号通貨のひとつという位置づけです。広辞苑・第七版は、この「仮想通貨」と「暗号通貨」の2語も新たに採録していました。このうち仮想通貨の方は「貨幣としての実体や強制通用力はもたないが、一定数の利用者がその価値を認め、主にインターネット上で貨幣として取引に利用する電子的情報」と定義。もうひとつの暗号通貨の方は「仮想通貨の一種。高度な暗号解読作業をコンピュータに行わせることにより過去の取引履歴の不正改竄かいざんを防ぐもの。ビットコインなど」と定義していました。

新採用の話題からは少しだけ離れますが、広辞苑の第五版(1998年)、第六版(2008年)、第七版(2018年)にかけて「電子マネー」の定義が少しづつ変化しているところも、個人的な注目点です。

具体的には第五版で「『ICカード』に現金の情報を記録し(後略)」としていた定義が、第六版で「貨幣価値をデジタル‐データとして『ICカードやソフトウェア』に記録し(後略)」と変化。

さらに最新の第七版では「貨幣価値をデジタル‐データとして『ICカードやインターネットに接続されたサーバー』に記録し(後略)」と変化したのです(『』は筆者が追加)。つまり価値の「記録媒体」が、ここ20年間で大きく変化したわけです。

組織の名前「世界経済フォーラム」

広辞苑は国語辞典だけでなく、百科事典の機能も兼ね備えています。小型辞書では取り上げにくい「固有名詞」も積極的に取り上げるのです。例えば特撮ドラマの「ウルトラマン」は、岩波国語辞典(第七版を確認)や新明解国語辞典(第七版を確認)や明鏡国語辞典(第二版を確認)には掲載されていませんが、広辞苑では第六版(2008年)以降に登場しています。

さて本記事のテーマは経済ワードです。経済関係の固有名詞として、まず押さえておきたいのは「組織名」でしょう。

例えば2008年発行の広辞苑・第六版の場合、「経済産業省」(中央省庁再編により2001年設置)、「日本郵政株式会社」(郵政民営化の一環で2006年発足)といった組織名が登場しました。

そして今年発行の第七版では、筆者が確認した限りでは「世界経済フォーラム」「大阪取引所」「消費者庁」といった組織が登場しています。

このうち世界経済フォーラムとは、毎年1月にスイス・ダボスでダボス会議を開催することで知られる国際経済団体のこと。その実態は、世界各国の企業によって構成される非営利団体です。設立は1971年と古いのですが、近年、ダボス会議の注目度が高まったため、団体名も注目されるようになりました。なお第七版は「ダヴォス会議」(元文ママ)という項目も立てています。

一方、「大阪取引所」は、かつての「大阪証券取引所」のこと。1878年に大阪株式取引所として誕生したのち、1949年より大阪証券取引所に。2001年に株式会社となり、2013年には東京証券取引所と合併。現在では日本取引所グループ傘下のデリバティブ專門市場となっています。このように広辞苑の新項目を観察すると「取引所の再編劇」も観察できるわけです。

そして「消費者庁」は、消費者利益の保護を目的に2009年に設置された新しい庁のこと。組織的には「内閣府の外局」として位置づけられています。

ちなみに2008年の広辞苑・第六版では、2001年における中央省庁再編に関連した新省庁名がたくさん登場したのですが(例:経済産業省など)、2018年発行の第七版でも「スポーツ庁」(2015年設置)、「防衛装備庁」(2015年設置)、「復興庁」(2012年設置)といった新省庁が登場しています。