はじめに

東京でもそろそろ梅雨入りが気になる時期です。気象庁の集計では関東甲信越の梅雨入りは平年で6月8日ごろですが、今年は少し早まるのでは、という予想も見られます。そこで今回は、梅雨時の雨の量と株価との意外な関係をご紹介します。


実は真面目な研究対象だった

「梅雨と株価に関係がある」と言われても、にわかに信じられない人も多いでしょう。しかし、天気と株価の関係は、ここ10数年、日本の学術界でも真面目に研究されている分野です。

そもそも、こうした研究の根底には「行動経済学」という学問があります。昨年、シカゴ大学の行動経済学の権威、リチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞したことで、さらに大きな注目を浴びています。

では、行動経済学とはどのようなものでしょうか。平たく言うと、人間の行動は、その時の気分に左右されます。ですので、株式を買ったりする投資も気分の影響を受けてしまうということです。

これまでの経済学では、すべての人は、利益を求めるうえで一貫して合理的な行動をとることが前提とされてきました。しかし、「一貫した行動」は、現実的ではありません。足元の投資環境を例に挙げてみましょう。

行動経済学で今年を考える

今年は、米国の中間選挙の年です。トランプ政権は支持率のアップを目指して、より自国重視な政策を打ち出し、日本企業に厳しい環境となるかもしれません。また、来年10月には消費増税もあります。国内景気のマイナスも懸念されます。

投資家の気分がネガティブな思考になっていると、このような懸念材料に目が向かいがちで心配になります。株式投資しようか迷っているとき、もう少し様子を見ようとなってしまうかもしれません。

一方、気持ちが前向きな時ならどうでしょうか。相場の好材料も多くあります。

2020年の東京五輪に向けて、国内は建設需要を中心に景気の回復が期待できます。また、来年5月から新元号がスタートします。元号が変われば、印刷業界など関連する業種では需要が高まるでしょう。それに、お祝い事にちなんだ産業も活発となるでしょう。

こうした好材料に目が向かいがちになれば、積極的に投資したいと考える気持ちも高ぶってきます。このような、投資家の気持ちが株価にどのように影響を与えるのかを考えて、株価の変動などを検証することが、行動経済学の1つの分野です。

天気晴朗ならば株高し?

それでは、天気と株価の関係のお話をしていきましょう。日本の経済や経営財務の分野で最も権威がある学会の1つにファイナンス学会があります。2004年に、その学会から注目の論文が発表されました。「天気晴朗ならば株高し」という論題のものです。

内容をかいつまんで言うと「晴れの日の株価は高く、曇りの日の株価は安い」というものです。もうすこし詳細をお話ししましょう。

表1は論文から抜粋したものです。ここで雲量が示されていますが、これは雲に覆われた部分が天の何割を占めているか、を指しています。

雲が完全に空を覆っているときが雲量100%となります。このように曇っていて天気が特に悪いときの日経平均株価の騰落率を平均すると、マイナスとなっています(-0.036%)。そして、株価が上昇した日数は全体の49.3%で5割を割り込みます。つまり、下落日数が多かったのです。

勝率を比較して見ると、特に天気が良い時は56.8%と5割を上回り、上昇した日数が多いことがわかります。また、騰落率も平均するとプラスでした(0.091%)。

ちなみに雲量が50%までの時は、特に天気が良い時(20%まで)に比べて平均値も勝率も下がりますが、特に天気が悪い時と比べると上回ります。まさに「天気晴朗ならば株高し」です。

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