はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

現在、実家住まいで、給料から所得税が引かれてません。確定申告は国民健康保険だけで、毎年収入はゼロで出しています。しかし、FXをやっているので、そちらで確定申告しようと思っています。なにか気をつけた方がいいことがあれば教えてください。また、FXは青色申告で確定申告できるのでしょうか。その場合のメリットとデメリットを教えてください。
(20代後半 独身 男性)


野瀬: ご質問ありがとうございます。

20万円以下なら、確定申告は不要?

まず注意点ですが、FXにおける儲けが20万円以下なら確定申告の必要はありません。ですから、当然そこから生じる税金を納めなくても問題はないということです。

そして、この20万円はFXの儲けから「経費」を差し引いた後の金額である点にも注意が必要です。

FXでの儲けを出すために必要だったものなのであれば利益から差し引くことができるので、引き忘れている経費がないか、領収書や請求書をひっくり返して探してみる価値はあります。

FX投資で「青色申告」はできる?

まず大前提ですが、原則としてFXで青色申告をすることは非常に難しいです。

平成24年度より、FXに関する所得は申告分離課税に一本化されました。FXでの儲けから、そのための経費を差し引き、そこに一律20%の税金が課せられます。(※ここでは、話を簡単にするために復興特別所得税の2.1%は加味しません)

一部のブログなどでは「FXを『投資』ではなく『事業』としてやっているという建てつけにすれば、『事業所得』となり、青色申告は可能」としていますが、これも微妙なところです。

実名で書いている人がいない以上、「できるかもしれませんが責任は持てません」という意味にもとれますし、特に質問者の方の場合は本業をお持ちですのでFX投資を「事業」と言い張るのは難しいと思います。

FXで認められている必要経費とは?

まずは、先ほど話にでてきた「経費」です。FXには経費は認められていないと思っている方が少なからずいるのですが、「FX投資のために必要なもの」であれば、経費で落とすことは可能です。

つまり、儲けから差し引いて、あわよくば20万円以下にして確定申告を回避することができます。FXの儲けを申告する「先物取引に関わる雑所得等の金額の計算明細書」にもしっかり「必要経費等」と記載する欄があります。

では、具体的にどんなものが経費として認められるのでしょうか。

(1)FXに関する書籍

逆に言うと、FXや外国為替情報に特化していないものは難しいです。

(2)FXに関するセミナーやそのDVD

領収書には「FX」や「外貨投資」などと書いてあることが望ましいです。なお、それに付随する交通費なども経費とすることが可能です。

(3)パソコンやそのインターネット料金

専業投資家ではないので、これらの100%を投資に使っているとは主張しにくいです。ただ「使っている」ことは間違いないので、いくらかを経費に載せることは問題ないでしょう。

これらの(1)~(3)を総合すると、結局何が大事なのかというと、それは「ストーリー」です。

税務署の人から「あれー?これホントにFX投資に必要だったんですかね?」と聞かれた時にどうして必要だったのか、またインターネット料金ならどうしてこの金額だけ必要だったかなどをスラスラと綺麗なストーリーで説明できることが大切なのです。

必要がなくても、確定申告すれば得するケースも

20万円以上の利益が出ている場合には確定申告を「しなければならない」のですが、確定申告を「すれば得するケース」もあるので気をつけてください。

逆を言うと、やらないと得にはなりません。税務署は税金を納めることを忘れた時には色々言ってくるのですが、税金がお得になる場合については何も言ってくれないのです。注意したいのは以下の3点です。

(1)FX投資で損が出ている

損を3年間繰り越して、翌年以降の利益と相殺(その分税金がかからない)することができます。

(2)過去にFX投資で損が出ている

今年は損が出ていなくても、3年間の繰り越しを「つづける」場合には確定申告が必要です。

(3)別のFX会社で損、別の先物投資で損が出ている

FXで利益が出ている場合は、他のFX会社で出ている損やそれ以外の先物投資での損と相殺することができます。これも確定申告をしなければできないことです。

以上の点をご自身でご確認の上、確定申告をされるとよいと思います。

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