はじめに

4月に入社した新入社員のみなさんは、給与をもらうのは今月で3回目くらいでしょうか?

給与明細はしっかり見ていますか?

もしかしたら、なんだか見知らぬ項目で金額が引かれている…なんてことも!?

そんな状況に遭遇してしまった場合、法律的にはどのようなポイントに気をつけるべきでしょうか。弁護士の私が解説していきたいと思います。

給与については、労働基準法24条1項本文が「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定めており(賃金全額払いの原則)、原則として賃金から積立金や貯蓄金等の名目で一部を留保したり、控除することは許されません。

また、労働者がミスをしたことで会社に損害が発生したとして、その分(損害賠償分)を賃金から控除する会社をしばしば目にしますが、かかる相殺(不法行為・債務不履行に基づく損害賠償請求権と賃金債権の相殺)も労働基準法24条1項に反し、認められません。


控除の例外もある

ただし、労働基準法24条1項但書は(1)「法令に別段の定めがある場合」、(2)「当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合」(労使協定)には、賃金の一部を控除して支払うことを例外として認めています。

実際には、給与明細を見るといろいろな名目で賃金から控除されているわけですが、これはこの例外が複数あるからなんですね。

具体的には、(1)の場合として、所得税の源泉徴収(所得税法183条)、市町村民税の源泉徴収(地方税法321条の5)、厚生年金(厚生年金保険法84条)、健康保険料(健康保険法167条)、労働保険料(労働保険の保険料の徴収等に関する法律32条)などがあります。

これらは、使用者が法令に基いて労働者の賃金から控除し、行政官庁に引き渡しています。法令に基づいているものですから、会社によって異なるわけではありません。

労使協定による例外

これに対し、(2)の労使協定による例外は、「社宅費」、「寮費」、「共済会費」等様々で会社によって異なります。労使協定は会社ごとに異なるからですね。ということで、賃金から(1)で挙げたもの以外が控除されている場合には労使協定を確認することが何よりも重要となります。

労使協定には「控除の対象となる具体的な項目」と「項目別に定める控除を行う賃金支払日」を記載すべきとの行政指導があり、使用者は労使協定を周知することを義務づけられています(労働基準法106条)。

労使協定は「労働者が見ようと思えば見れる状態」に置かれていないといけないわけですね。ここで、労使協定を見せてくれないような会社はいわゆる「ブラック企業」の可能性が高いと思いますね。

イザというときは法的手段を

そして、会社が労使協定を見せてくれない場合や労使協定に記載のない名目のものが控除されている場合には、遠慮せずに会社に対して違法であることを指摘し、会社が聞く耳を持たなければ、労働基準監督署・弁護士に相談することを検討すべきでしょう。

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