はじめに

とても暑い夏です。「夏は暑いほうが景気や株価に良い」というのが、経済や株式市場の専門家の間で常識的な話とされています。

今回は“夏が特に暑くなった時”に株価がどのように推移するか、お話をしましょう。


「サマーラリー」はどうして起きる?

夏が特に暑いと「性能が良いエアコンに買い換えて、夏を涼しく乗り切りたい」と思う方もいるでしょう。もっと身近な話をすると、仕事帰りのビアガーデンでビールが進む人もいるでしょうし、暑い外出先から家に戻ってくるとアイスが食べたくなる方もいるでしょう。

エアコン、飲料、そしてアイス。夏が特に暑いと人々の消費が進むため、その効果が景気押し上げにつながります。とりわけ、このような消費に関連する会社の業績の回復が期待されて、株価も買われたりします。

こうした会社は株式市場で「サマーストック」と呼ばれます。そして、株式市場全体も、サマーストックが牽引する上昇相場が期待されます。こうした夏の上昇相場は「サマーラリー」と呼ばれます。

そこで、本当に夏が特に暑いと株高になるのか、気象庁のウェブサイトからデータを取得して調べてみました。1年で最も気温が高くなる月は8月です。そこで1970年から2017年までの48年分の東京の気温に着目しました。

48年分の8月を分析すると…

暑さの感じ方には個人差がありますが、真夏日と言われる30度を超える日になると、“特に”暑いと感じる人も増えるでしょう。そこで、8月のうち、30度を超えた日が何日あったか、調べました。表1が集計結果です。

ところで、8年前の2010年は観測史上最も暑い夏になりました。気象庁の発表では「8月の平均気温は北・東・西日本で、1946年の統計開始以来、第1位の高温」でした。

東京では、8月に30度を超えた日は30日(超えなかった日は1日だけ)になりました。ちなみに、2017年8月に30度を超えた日は19日だったことと比較しても、その1.5倍を超えます。

表1の作り方ですが、1970年以降の8月で、このように30度以上の日数が何日あるかをチェックします。すると、真夏日が22日以上で区切ると、48年分が24年ずつとなり、ちょうど真ん中で分けられます。

記録的な猛暑の2010年は真夏日が21日以上に分類されますし、2017年は20日以下となります。そして、それぞれに分類された24回の8月相場の日経平均株価の騰落率を平均してみました。

「特に暑い夏」でも株価が下落するワケ

集計結果は意外でした。

日経平均の平均騰落率は、真夏日が22日未満の8月(▲0.64%)よりも、真夏日が22日以上の特に暑い8月(▲1.29%)のほうが、マイナス幅が大きくなっています。勝率を見ても、特に暑い8月の株高は全体の42%で5割を割り込んでいます。つまり、下落した8月が多かったというわけです。

ちなみに、1970年以降の8月相場を48年分集計すると、平均して▲0.97%の下落でした。前述したように、8月はサマーラリーの時もありますが、まったく反対の「夏枯れ」と呼ばれる相場になってしまうことも多いようです。

8月はお盆休みの時期でもありますし、たくさんの投資家がお休みをとってしまう月です。外国人投資家の中には、1ヵ月程度の長期サマーバケーションに出掛けてしまう人もいます。市場全体で商いが薄い中、相場が調整してしまう傾向も見られます。

そして、特に暑い夏は下落が顕著となっていました。“特に暑い夏は株高”という業界の常識からは、かけ離れた結果です。

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