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東南アジアに鉄道ラッシュ、注目の企業はどこ?

ベトナムとインドネシアにMRT建設

ASEAN(東南アジア諸国連合)主要国の中でも都市鉄道の建設が遅れていたインドネシアで、来年にもMRT(大量高速輸送鉄道)が開通します。インドネシアと同じく交通インフラの遅れが目立つベトナムでも、相次いでMRTの建設が着工し、駅建設予定地の周辺を中心に不動産開発ラッシュとなっています。

この開発ラッシュので注目される企業はどんな企業なのでしょうか。まずは、現地の開発状況を見てみましょう。


沿線不動産も開発ラッシュ

ベトナムのホーチミンでは、2020年の開通を目指してMRT1号線が建設されています。中心部のベンタイン市場前から東北部へと20キロメートル弱を30分で結ぶ予定です。路線沿線では開通後の地価の上昇を見込んで、大手不動産デベロッパーが、中間層から富裕層をターゲットに分譲価格で1,500万円前後から数千万円のマンションをこぞって開発しています。

中でも代表的なプロジェクトのひとつが、ビンタン区のビンホームズ・セントラルパークです。最寄りにはMRTの2つの駅が設置される予定で、東京ドーム約8個分の広大な敷地に、40~50階建ての高層マンション18棟や高級ヴィラ、公園、最新の医療機器が整う国際病院、インターナショナルスクール、ショッピングセンター、レストランなどが軒を連ねます。

さらに敷地内には、年内にもASEAN最高層となる高さ461メートル、81階建てのランドマーク81が全面開業する予定です。今年7月に先行オープンした、地上5階部分までのショッピングセンター「ビンコムセンター」は、週末には人で溢れかえっており、ホーチミンで最もホットなスポットのひとつです。

一方で、筆者が今年8月にホーチミンを訪れた際、MRTの建設工事が中断されている現場にも出くわしました。現地では、経営者による資金流用や代金の未払いなどの不正が横行し、資金不足に陥っているとの噂もありました。真偽のほどは定かではありませんが、開通時期が延期される可能性もありそうです。しかしベトナム政府の計画では、1号線を含む全6路線、総延長170キロの建設が予定されており、開発が進められる方向性には変わりはないでしょう。

ハノイでもMRTの開発が進められています。ベトナム政府によると、1号線から8号線まで計9路線(1、2、2A、3~8号線)が敷設される予定で、日本やフランス、中国などのODA支援を受けることが決まっています。最も建設が進んでいる2A号線では、すでに試運転が始まっており、早ければ年内にも商業運転が開始される見込みです。今後MRT開通が相次げば、ベトナム市民の生活も大きく変わっていくでしょう。

交通渋滞の解決策

所変わってインドネシアは、1人あたりGDPの水準から見てモータリゼーション期に差し掛かっています。特にジャカルタの渋滞は「世界最悪」と形容されるほど、社会問題化しています。

通勤時間帯ともなると、30分で行けるところが2~3時間掛かるような、劣悪な渋滞の緩和に向けて、州政府は、運転手を含む3人未満の自家用車の通行を規制する「3 in 1」や、自家用車のナンバープレートによる通行規制を実施してきました。しかし、今のところあまり効果は見られません。

そうした中、来年3月に、ジャカルタではMRTが開通します。開通を目前に控える第1期では、日本料理店が多いブロックMなどがある南ジャカルタから、高級ショッピングモールや日本人駐在員が多く住むスナヤン地区を通り、大使館が立ち並ぶ中央ジャカルタのホテルインドネシア前まで、約16キロメートルに13の駅が建設されています。

MRTはジャカルタの南北を貫くスディルマン通りなどの幹線道路沿いに敷設されているため、渋滞の改善が期待されています。9月末時点での工事進捗率は97%となっていることから、ほぼ予定通り開業しそうです。また、来年の4月に大統領選挙を控え、MRTの建設は大型インフラ整備を政策の核に据えてきたジョコ政権の目玉のプロジェクトでもあるため、現政権の実績のひとつとして開業を急ぐことが予想されます。

注目されるゼネコン株と不動産株

このように、今後相次ぐMRTの開通ベトナムとインドネシアの経済成長の加速が見込まれる中、株式市場ではどのような企業が注目されるのでしょうか。

一般的に株式市場では、インフラ投資の恩恵を受けるセクターとしてゼネコンが注目される傾向があります。しかしベトナムのゼネコン各社は、足元、建設需要の急増による資金繰りの悪化や、競争激化による利益率の低下などの課題を抱えています。一方で、上場鉄鋼最大手のホアファットグループなど素材各社は製品価格の上昇や販売量の増加などを追い風に業績が堅調に推移しています。

一方、インドネシアでは、米国の利上げやトルコ通貨危機などの影響による新興国からの資本流出に加えて、景気の停滞などを背景に株式市場が低迷しています。さらに来年4月に大統領選を控え、しばらく様子見ムードが続きそうです。

ただ、大統領選挙では現職のジョコ・ウィドド氏と対立候補のプラボウォ・スビアントの激戦が予想されていますが、どちらが勝利しても引き続きインフラ整備に注力する方針は変わらないと思われます。したがって大統領選挙前後に、再び、PT PP(ペルセロ)やウィジャヤ・カルヤ、ワスキタ・カルヤといった大手ゼネコン株や、ブミ・スルポン・ダマイなどの大手不動産株が見直される可能性があるでしょう。

(文:アイザワ証券 市場情報部 北野ちぐさ)

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