はじめに

2019年の株価は波乱の幕開けとなりましたが、その後は緩やかに上昇基調で「適温相場」再来の雰囲気も感じます。1日単位だと気付きにくいのですが、1週間、数週間単位でみると、トレンドの変化が見えてくることがあります。

そこで、株価に影響を与える主要市況の動きを2017年、2018年と比較して、市場トレンドに変化が出ているかどうかをチェックしてみたいと思います。


円高、原油安、米株安 ⇒ 少し緩和

まずは為替レート、米国株価、日米長期金利、原油と金の価格を見てみます。為替レートは日本経済に直接影響を与えるので株価にも影響が出そうなのは理解しやすいですよね。でも実は、金融市場のグローバル化やパッシブ化(インデックス運用の増加)のおかげで、各金融市場の連動性が高まっており、為替以外の指標の変化の影響も受けやすいのです。

また、日米欧の大規模金融緩和の結果、市場にあふれた余剰マネーが株式を始めとする市場価格を実力以上に押し上げている側面も忘れてはいけません。そのため、少しの市場心理の変化で株価の振れ幅が大きくなりやすいのです。

ヘッジファンドや機械によるプログラム運用がその振れ幅をさらに広げている影響もあります。そこで為替だけでなく、原油や金などの市場心理を反映しやすい指標もとても参考になると思います。

表1を見てみると、2017年は、対ドルで円高、対ユーロで円安、米株高、日米長期金利はほぼ横ばい、原油高、金上昇でした。2017年の国内株価は大きく上昇していますが、各指標のうち株価と同じ方向なのは、米株価と原油価格、そして金価格とユーロです。企業業績が大きく拡大した年ではありますが、米株価と原油価格も市場心理回復に貢献したように思います。

2018年は、円高、米株安、米長期金利上昇、原油安でした。米長期金利以外の主な指標がいずれも株安方向に寄与した様子が分かります。米長期金利も昨年9~11月は3%を超えており、そこから2.68%まで急落したことを踏まえれば、米長期金利も昨年12月の株安の背景にあるように思います。

2019年をみると、米株価と原油価格はプラスとなり、為替も年末比で少し円高ですが、年明けに1ドル104円の円高となったところから回復したとみれば、株価にマイナスには働いてないように見えます。全体に穏やかな推移となっており、「昨年12月の急落から少し回復して一旦小休止」というところでしょうか。

2018年はディフェンシブに転換せず

次に表2を見てみましょう。東証にある数多くの指数のうち、市場トレンドを見る上で筆者がよく活用している指標です。

NT倍率は日経平均を構成する225銘柄への取引集中比率が高まると数値が上昇します。この数年は12倍台でしたが、2018年半ばに1999年以来の13倍に乗せ、年明けもそのままで推移しています。同構成銘柄の組み入れ比率上位は、値がさ株やハイテク株が多く、こうした銘柄への取引集中が続いているようです。

株価上昇局面では、成長期待先行となりグロース指数がバリュー指数を上回るケースが多いと思います。2017年は正にその典型でしょう。一方で下落局面では、業績変動が小さい銘柄や配当利回りが高い銘柄など、下がりにくい銘柄に回避する「ディフェンシブ」という動きが見られることが多くなります。

しかし2018年は、バリュー指数の下落率が大きく、配当フォーカス100指数も優位性を示していません。これは下落してもなお、再び上昇する期待が残されている可能性や、下落局面ではバリュー株も下がる可能性、配当株も減配となる可能性など、いくつかの可能性が考えられますが、少なくとも単純にディフェンシブ指向となっていないことは確認できます。2019年はまだ大きな差が出ていませんが、これからの動きに注目しましょう。

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