はじめに

前回の記事(「底入れした株式市場は高値を取り戻せるのか?」)では、米国のダウ平均が半値戻しを達成したタイミングで「半値戻しは全値戻し」という相場格言をご紹介しました。

その後もダウ平均は力強く戻り歩調を辿って、昨年秋から急落した分の8割以上を取り戻しています。あと3.6%上昇すれば再び史上最高値更新、まさに「半値戻しは全値戻し」という格言を地で行く相場展開になっています。

それに引き換え、日経平均の戻りの鈍さが際立ちます。先週は2営業日で800円も上昇する場面があったり、今週に入って昨日まで3連騰と、ようやくエンジンがかかってきた感はありますが、それでも昨年秋の高値からの下げ幅に対して半分も戻せていません。


なぜ日本株は出遅れているのか

この1年、相場の最大の懸念材料であったのは米中の貿易戦争でした。現在、大詰めを迎えている両国の貿易協議は進展していると伝わるものの、まだ最終決着は見えません。3月1日という期限が迫る中、この問題の不透明感が相場の上値を抑えているのでしょうか。

しかし、米中貿易戦争の行方は世界中が固唾をのんで見守る世界共通の問題です。その進展に対する市場の捉え方に関して、米国株の投資家と日本株の投資家の間に大きな認識の違いがあるとは思えません。米中問題の不透明感では、米国株が下げ幅の8割強を戻し、日本株がその半分しか戻せていないことを説明できません。

日本株固有の悪材料としては、真っ先に思いつくのは円高です。事実、米国の連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止で、円高になるという懸念が一時台頭しました。とすると円高懸念が日本株の重石なのでしょうか。

今でも市場の一部に円高恐怖症は根強く残っているかもしれませんが、実際には円高ではなくドル高となっています。FRBの利上げが当面ないことは完全に織り込まれているので、この材料ではもう円高になりようがありません。

FRBは利上げを当面停止しますが、日銀も欧州中央銀行(ECB)も次の一手を繰り出すのは当分先になりそうです。日米欧の金融政策が三すくみのような状態になれば、結局は現在の金利環境がしばらく続くことになり、そうであれば最も金利の高い米国に資金が向かうのが道理です。

それに加えて、日銀の黒田総裁は昨日追加緩和の可能性にさえ言及しました。こうした状況の中、円高懸念は相当程度後退しており、日本株の重石になっているとは思えません。

出遅れの原因は企業業績

そうなると、やはり冴えない企業業績が、株価の戻りの鈍さのいちばんの理由だと思えます。2月19日の日本経済新聞では1面で「上場企業の2019年3月期は増益予想から一転、3期ぶりに減益になりそうだ」と報じました。

記事は「3月期決算企業の純利益の合計は昨年11月時点では前期比1%強増と3期連続の最高益見通しだった。それが昨年末以降、潮目が変わった」と述べています。ところが別紙面の投資情報のページを見ると「全体では微増益を確保」とあります。ざっくり言って、悪いには悪いのだけれど、そんなに酷いかと言えばそれほどでもない、という感じです。

わかりやすい例を挙げましょう。日経平均が昨年の高値2万4,270円をつけた10月2日、日経平均の予想PERは13.95倍でした。一方2月19日の日経平均の終値は2万1,302円、予想PERは12.28倍でした。あくまでもテクニカル的な数字ですが、割り算すればベースとなる予想EPSは1,740円弱で変わらないことが確認できます。

つまり、株価評価のもととなる企業業績の見通しは、2万4,270円の高値をつけた昨年秋と2万1,000円台で低迷する今とでは、まったく変わっていないということなのです。

こうしてみると株価は、企業業績の「水準」ではなく、その変化の方向、すなわち業績の「モメンタム」の影響が大きいのだということが言えます。グラフは日経平均の株価と予想EPSの前年同月比を表したものですが、株価の変化率と予想業績の変化率との関連性が見て取れます。株価の変化が業績の変化に先行しているのが見てとれます(下図)。

日経平均株価と予想EPSの前年同月比推移

四半期で見れば、おそらくこの10~12月期が企業業績悪化のボトムになるでしょう。10~12月期の当期利益の前年同期比はTOPIX(除く金融)でマイナス25%、日経平均構成銘柄ではマイナス30%ですが、2019年3月期通年では微減益で着地すると予想されています。

つまり第4四半期には企業業績が持ち直すというのが市場のコンセンサスだということです。株価の変化が業績の変化に先行するなら、株価は業績の底入れを既に織り込んで下落し、今後の業績持ち直しを織り込みにいくステージに入っているのだと考えられます。

前段で述べた通り、日経平均の予想EPSは昨秋と同じ水準。全値戻しの条件はそろっているので、業績回復が確認できる本決算発表の4~5月には2万4,270円の高値を取り戻すと思われます。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆 写真:ロイター/アフロ>

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