はじめに

昨年10月から12月にかけて、グローバル株式市場は大きく調整しましたが、年明け以降、落ち着きを取り戻しています。背景として、米中通商交渉の進展期待が高まってきたこと、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策に対して柔軟な姿勢を見せたことで市場に安心感が広がったこと、が挙げられます。

しかし、投資家が気にしていた企業業績の先行き懸念が解消されたわけではありません。にもかかわらず、株価が堅調な動きを示したのは、業績の厳しさは「織り込み済み」だったからといわれます。

今回は、この「織り込み済み」とは何なのか、そしてそれを投資に活かすにはどうしたらよいのかをご紹介します。


株式市場に織り込まれているかどうかは何でわかる?

よく見かけるこの「織り込み済み」という言葉ですが、あるニュースの影響で株価が変動することを「(ニュースの影響を)織り込む」といいます。つまり「織り込み済み」とは、すでにその影響による株価変動は終えた、という意味で使われるのです。これは、事前に投資家が予期できたかどうかがカギとなります。

例えば企業業績の場合、それを分析し、予想する専門家であるアナリストが各証券会社におり、これらアナリストの予想平均をコンセンサス(市場予想)といいます。「織り込み済み」かどうかは通常、このコンセンサスの数字を手掛かりに判断します。

コンセンサスの数字が切り下がっている(切り上がっている)状態だったら、先行きの業績に対するアナリストの見方が厳しくなってきた(良くなってきた)と判断し、それをもとに投資家は株式を売ろう(買おう)、といった投資行動をとります。

アナリスト予想の修正度合いを測るリビジョン・インデックス(RI)で見てみましょう。アナリストの上方修正が増えれば数値は上向き、下方修正が増えれば下向きに動きます。RIの動きから、日米とも2018年10月以降1月にかけて下方修正が増えており、多くの投資家が次第に業績の先行きに対して警戒を強めたと推察されます。

図表1 業績懸念の織り込みは進展

2月以降の日米RIを見ると、引き続きマイナス圏に沈んだままで下方修正が多い状況ですが、米RIは上向き傾向で、上方修正が増えていることがわかります。10~12月決算が出る前から、業績は良くないだろうと事前に身構えていただけに、実際の決算発表を受けて、良好な内容、あるいは思ったほど悪くない決算を出した企業の業績見通しの修正が進んでいると考えられます。

ニュースの織り込みの違いで反応が異なる例

企業業績以外にも、様々なニュースが流れますが、株価に織り込んでいるかどうかで全く反応が異なります。悪材料の最たるニュースとしてテロと戦争が挙げられますが、株価への反応を見ると対照的です。

テロの事例として、2001年9月11日に米国の世界貿易センタービルや国防総省等を襲った同時多発テロで見てみましょう。テロはいつ、どこで起こるのかが予想できないため、株式市場に織り込まれておらず、2001年9月11日のテロ発生後、株式市場は大幅下落に見舞われました。

図表2 2001年9月のアメリカ同時多発テロを挟んでの動き

一方、戦争は事前にある程度予期できる点がテロと異なります。対立していた国が様々な交渉を経た後に決裂し、戦争に至るといった段階を踏むので、最悪の事態をある程度想定できるためです。

2003年のイラク戦争を例に見てみましょう。当時の米国ブッシュ大統領は2003年3月17日にイラクに最後通告を行い、3月20日に戦争が始まりました。3月17日の最後通告から戦争開始を受けて動きは、NYダウ、日経平均株価ともに上昇となりました。戦争の可能性を市場は予期していたため、戦争開始が決まった段階で、早期終結を織り込みにいったことが、株価の動きに出ています。

図表3 2003年3月のイラク戦争を挟んでの動き

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