はじめに

「定時までに仕事が終わらない」
「効率よく仕事がまわらない」
「考えすぎて仕事がなかなか進まない」

そうした状態に陥り、仕事を溜めこんでしまうことはないでしょうか。仕事を頑張ろうという気持ちはあるのに、ただ時間ばかりを浪費してしまう。それでは上司からの評価は下がるばかりです。

こうした袋小路から抜け出す方法について、ライフネット生命の創業者であり、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)の学長として多忙を極める出口治明氏は、「仕事の生産性は、どんどんアウトプットすることで高まる」と言います。

出口氏の著書『知的生産術』の第3章「最小の労力で最大の成果を上げる『インプットとアウトプットの技術』」より、その方法を紹介します。


ラクする方法を頭で考えて、知的生産を高める

働き方改革が叫ばれるなか、生産性の高い働き方が求められています。そもそも生産性を高めるとは、どういうことなのでしょうか。

出口氏は、「生産性の高い働き方」を次のように定義しています。

・同じ仕事をより短い時間でこなすこと
・同じ時間でたくさんの量をこなすこと
・同じ時間で仕事の質を高めること

これらは、人が「成長すること」と同義です。そして、自分が成長するためには、社会常識や他人の意見を鵜呑みにせず、原点にさかのぼって「自分の頭で考えること」が必要とも指摘しています。

すなわち、「知的生産性を高めること=自分の頭で考えて成長すること」がこれからの私たちの働き方に必要不可欠だと出口氏は考えています。

たとえば、午後4時に上司が目の前にあらわれ「これを今日中に終わらせてほしい」と言って、新しい仕事を押し付けてきたとします。5時間はかかりそうな分量です。ですが、午後7時から飲み会の予定が入っているとしたら、どうしますか?

知的生産という概念がない人は、「今は午後4時で、この仕事を終えるには5時間かかるから、会社を出るのは午後9時になる」と判断し、飲み会を断わって残業する選択肢をとります。

けれど、知的生産性の高い人は、こう考えるでしょう。

「仕事も大切だけど、飲み会も大切だ。飲み会に参加するには、5時間かかる仕事を3時間以内で終わらせなければいけない。今までと同じやり方だと3時間では終わらないから、違ったやり方を考えてみよう。これまでは『A→B→C』の順番で仕事をしていたけれど、いっそのこと『B』を省いて、『A→C』と直列につなげばもっと早く仕事が終わるかもしれない。よし、やってみよう!」と。

生産性を高めるイノベーションは、「サボりたい」という気持ちから生まれると言っても過言ではありません。自分の想像や力量を超える仕事を任されたとき、自らの頭で今までとは違うやり方を必死に考え、実行(アウトプット)することで、生産性の高い成果を得ることができるのです。

仕事がうまくいかないのは、インプットとアウトプットの量が足りないから

自分の考えがまとまらない、いいアイデアがなかなか思い浮かばないなど、仕事が思うようにいかないのは、たいていの場合インプット不足に原因があると出口氏はいいます。「アイデアは降りてくるもの」という人もいますが、それは自分の脳にすでにある情報が、何かの拍子に出てきたものがほとんどのはずです。

インプットの絶対量が足りなければ、判断の精度は高まりませんし、発想の幅も広がりません。わからないことや気になったことはそのままにしないで、納得するまで調べる。そうすることで、確度の高い情報や検証可能なデータをインプットすることができます。

ただし、いくらインプットの量が多くても、何らかのアウトプットをしなければ、意味がありません。

インプットの量を増やすのは、アウトプットをするためです。「ただ勉強しているだけ」では、意味がありません。インプットしたら、仕事を任されたら、何かを勉強したら……、すぐにアウトプットする。成果を出す。結果を出す。アウトプットの回数を増やせば、どんな仕事も、必ず生産性が高まるはずです。

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