はじめに

定食チェーン「やよい軒」は、定食メニューを注文すると無料だった「ご飯のおかわり自由」(白米)を、一部店舗で試験的に有料へと切り替えます。

ご飯おかわり無料は、やよい軒の人気サービス。なぜ有料化を始めるのでしょうか。やよい軒を運営するプレナスに試験導入の背景を聞きました。


「同じ価格だと不公平感があった」

「やよい軒のご飯おかわりが有料になる?」――。この情報がTwitterに投稿されると、ネットの一部がざわめきました。

ネットにアップされた写真には、定食のご飯(白米)おかわり自由はプラス30円かかるという店内のお知らせが載っていたのです。また、通常の白米から十六穀米の大盛りに変更する場合も、プラス50円がかかると書かれています。

やよい軒は、店内設置の炊飯器からセルフ方式でご飯をよそって、お腹いっぱいになるまでおかわりできることで知られ、ウェブ上でも話題になる人気のサービスでした。それだけにショックを受けた人は少なくないようです。

やよい軒のTwitter公式アカウントに「これは本当なのかぁぁぁぁぁ!」と問い合わせるユーザーも現れました。これに対して、公式アカウントは「やよい軒の一部店舗におきまして4月16日より『白米のおかわり有料化』を試験的に実施いたします。また、白米のおかわり有料化実施店舗により内容が異なります。あらかじめご了承ください」と返答しています。

今回、なぜご飯のおかわり無料を見直すことになったのでしょうか。運営元のプレナスに取材すると、広報担当者は次のように狙いを説明してくれました。

「やよい軒の定食価格はご飯のおかわりをする人と、しない人で同じだったため、以前から価格に不公平感があるとご意見をいただいていました。白米のおかわりは、利用する人としない人の割合が半分半分。十六穀米を大盛りにする方は2〜3割なので、新たに価格を設定して、お客様に評価いただくテストマーケティングのような形です」

上場来初の赤字転落とは無関係?

価格変更は全体378店舗のうち12店舗で試験実施。地域は東京、千葉、茨城、栃木で、直営の店がメインとなります。白米のおかわり価格は店舗によってプラス30〜100円と幅があり、十六穀米の大盛りへの変更は一律でプラス50円です。

4月16日からの実施で終了期間は未定で、消費者の評価や状況をみながら決めるといいます。ネット上ではいずれ全店に拡大するのではという見方も出ていますが、「現時点ではあくまでもテストマーケティングの一環。先に関しては未定」(前出の広報担当者)としています。

運営元のプレナスは、2019年2月期の連結決算で最終損失が29億円と、1993年の株式の店頭公開以来で初となる赤字になっています。やよい軒事業の売上高は311億6,500万円(前期比6.3%増)だった一方、本業の儲けを示す営業利益は12億9,800万円(同11.4%減)と2ケタ減益になりました。

売上高は既存店売上高の増加と新規出店の増加でプラスになりましたが、営業利益は主に仕入れコストの上昇により前年実績を下回りました。今回の価格変更の試験実施と、決算の影響や米の仕入れ価格について、広報担当者は「まったく関係ない」と否定しました。

吉野家はおかわりを無料に

やよい軒がご飯のおかわりの有料化を試験的に実施する一方、飲食チェーンでは「ご飯おかわり無料」とする企業が増えつつあります。

牛丼チェーンの吉野家は4月1日、利用客数の少ない午後3時~午前0時は、定食メニュー11種類を対象にご飯おかわり無料としました。同社が定食のご飯のおかわりを無料で提供するのは初めての試みです。

また、天丼チェーン「天丼てんや」でも4月2日から、定食メニューのご飯おかわりを無料にしています。前にもあったサービスですが、2018年1月に廃止されていました。

やよい軒でおかわり無料がなくなったら、消費者は他社チェーンに流れることになるのでしょうか。やよい軒の動き次第では、昼時、夕食時の飲食店の勢力図が大きく変わる可能性もありそうです。

<文:編集部 小島和紘>

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