はじめに

今年に入ってから、中国政府の景気対策や米中貿易交渉の進展を背景に、中国本土と香港の主要株価指数は大きく反発しました。

このうち、中国本土の上海総合指数と深圳総合指数の年初来騰落率はそれぞれ+31.2%と+40.3%となっており、世界の主要株価指数の中でトップクラスの株価パフォーマンスを見せました。一方、香港ハンセン指数の年初来騰落率も+15.9%と、中国本土株ほどではないものの、堅調に推移しました。

はたして、この勢いは本物なのでしょうか。そして、この先も続くとすれば、どこまで続くとみられるのでしょうか。


予想以上に早く進展した米中貿易問題

筆者は昨年12月26日に執筆した「今年大幅に下落した中国株、来年の見通しは?」において、(1)米中貿易問題は2019年後半から進展する、(2)中国の実体経済は基本的に減速基調、(3)金融緩和・政策支援期待で株価が反発する、と予想しました。

現在の状況を確認しますと、(2)実体経済の減速と(3)金融緩和・政策支援はおおむね予想通りになりました。一方で、(1)米中貿易問題については予想以上に早く進展しました。

米中貿易問題が早く進展した主な原因としては、両国がお互いに課した追加関税の悪影響が広がったこと、ドナルド・トランプ氏が2020年の大統領再選に向けて対中貿易交渉で実績を上げる必要性があったこと、などが考えられます。

関税導入後の米中の輸出額(2018年9月~2019年2月の累計、ドル建てベース)を見ますと、米国の対中輸出額は前年同期比25%減、中国の対米輸出額は同1%増と、とりわけ米国の輸出低迷が目立ちました。

輸出額

輸出の低迷が長引けば、米国企業の業績悪化と大統領の支持率低下につながりかねないほか、中国でも雇用環境の悪化が予想されます。こうした事情から、貿易交渉の早期決着を図るという点で、米中両国の利害が一致したと思われます。

足元では、米中貿易交渉は最終段階に入ったとの観測が強まっています。仮に両国が最終合意に達すれば、中国経済を取り巻く大きなリスク要因が取り除かれることになり、企業業績と投資家心理の改善につながると見ています。

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