はじめに

「現状にちょっとした変化を」という期待を抱き、"自分への投資(*)"をしてみようかなと考えている人。すでに何らかの行動を取り始めている人。

私は、そんな心境の人たちに「きっかけとなる体験」を届けることを仕事にして、もうすぐ10年目になります。

お金を運用して資産を増やすという話と似たところがある、この"自分への投資"。資産運用と同じく、学校では体系的に学ぶ機会が少なかったトピックですが、人生100年時代と言われる現代において、興味を持っている人は少なくないなと感じています。

私自身も過去10年の間に、セクター・業種・国境を超えた転職や大学院留学を経験しました。その過程で、似たような道を模索中の人たち、経験してきた人たちとたくさん関わってきました。

そこで、これからの記事では、仕事の内外での経験を通じて学んできたことを、皆さんとシェアしていきたいと思います。

(*)自分への自己投資=自分がイメージする「なりたい自分」へ近づけるように「今の自分」や自分の置かれている環境変化に対して時間、エネルギーや時にはお金を投資すること


現状パターンを抜け出すのは基本的には難しい

「自分への投資」という表現を聞いてどういう印象を抱きますか?

なんだかワクワクした響き。でもまとまった時間やお金が必要そう。

実際はそうじゃないのですが、忙しい生活を送っている私たちにとって、精神的にも物理的にも最初の一歩を行動に移すのは簡単なことじゃありません。新年の抱負というものが、概して行動につながらなかったり、始めたとしても続かないのと少し似ています。

2012年以降、欧米を中心に、成人を対象にした無料オンラインコースが急成長しました。けれども、コースに登録する人の数と最後までやり切る人の数の差を見ると、学習を続けることがいかに難しいことかがよく分かります。意志はあっても、行動を続けるのは難しいものです。

私はこういったオンラインコースを提供する側として、業界のデータを色々と見てきましたが、コースを最後まで履修する流れを追ったときにあることに気づきました。登録者の多くは、登録完了から最初の行動(読み物をダウンロードするとか最初のビデオを見る)の段階で脱落しているのです。

この事は、まるで興味のある本を買うものの、「積ん読」になってしまう状態とも似ているとも言えるでしょう。

「新しいスキルを身に付けたい」「これからは〇〇の理解を深めたい」「(仕事・家での)今抱えている悩みの解決に向けたヒントを得たい」「現状を抜け出したい」…。

そう思って初めの一歩を踏み出してみたものの(道具を揃えたり、クラスへの申し込みをしたり、アプリをダウンロードしたり)、結局長続きしなかったという体験は誰しも心あたりがあるのではないでしょうか。

どうしてこういうことになってしまうのでしょう。私たちの意志の強さが足りないのでしょうか?

自分の意志で「頑張る」の限界

私は仕事を通じて日本の企業の若手社員〜部長層から、インドの農業系スタートアップの起業家、ケニアの政府系機関の職員、創業数年となる小さなNPO団体のメンバーといった人たちなど、たくさんの忙しい大人たちの「自分への投資」のあり方を見てきました。

その中で、「個人の意志の強さ」で行動を継続的に変えていくことができる人は、少数派だなと感じてきました。

どんな「立派な」人たちでも、基本的に現状パターンを本人の意志の力のみで変えるのは難しい。むしろ、人間としての限界を意識した上での、できる範囲での小さな習慣づけに向けた試行錯誤だったり、その過程をサポートする支援者の存在や小さな成功体験の積み重ねなどが重要だな、と思うようになりました。

「ぼんやりとした気持ち」を「具体的な行動、特に持続性のあるアクションにつなげること」にするために、忙しい日々に無理をしない範囲で取り入れていく小さな習慣づけ。

そのために今回は日々の習慣に取り入れてみると便利な、「緊急度・重要度マトリックス」というツールを紹介します。

無理ない範囲で日々に取り入れてみる「緊急度・重要度マトリックス」

このツールは普段、仕事(または仕事外)で物事の優先順位づけをするときに便利とされている考え方ですが、自分の時間の費やし方を振り返る際に使うこともできるシンプルなものです。

使い方は簡単で、定期的にに自分の時間が使われているものを思い浮かべながら、それらが以下の4つの箱のどこにカテゴライズされるかを考えるだけ。

1の「緊急度と重要度が共に高い箱」。ここには私たちの多くがまず取り組む事柄が含まれます。

それは締め切りが近づいているレポート作成かもしれないし、職場復帰前に決めなくてはいけない子供の保育園探しかもしれないし、今夜の夕食の献立決めかもしれません。関係が悪化している部下とのコミュニケーションの改善策を探すべく本屋に立ち寄るかもしれないし、TOEICの試験が来月に迫っていたらとりあえず勉強に精を出すでしょう。

つまり、この高い箱の中に入ってしまえば、頭の中の多くの部分を自然に占めるようになるので、敢えてモチベーションをデザインしたり、自分の背中を自分で強い意志を持って押していく必要性は下がります。

どういうキーワードで情報を探すべきか、情報を知っている人・本をどうやって探そうかということについても頭の中で色々とアイディアがグルグルと回りやすいでしょう。

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