はじめに

保険はなんのために必要なのか? それは、もしものことが起こったときの備えです。人生には、不安や心配事がつきものです。保険は、そんな心配事や不安を安心に変える役割も持っています。といっても「子供の成績が悪いのが心配」というのは、保険では解決ができませんが……。

保険とは、あくまでも経済的に困ったことに対処できるツールなのです。しかし、不安を解消するために、なんでも保険に入ればいいわけでもありません。「あれも心配」「これも心配」といって保険に入れば、いくらお金があっても足りません。

すべての心配事に保険を使うのはナンセンスです。保険料の支払いが家計を圧迫してしまっては、本末転倒になります。そのうち「保険料が心配!」となってしまいますからね。

では、人生の中のそういった心配事にうまく対応していくためにはどうしたらいいのでしょうか? そのためには、家計をリスクコントロールすることが必要になってきます。

さっそく、賢い「家計のリスクコントール」の方法を説明していきましょう。


「リスクの転嫁」で、大きなリスクは肩代わりしてもらう

私は、家計のリスクコントールを「リスクの転嫁」「リスクの保有」「リスクの軽減」の3つの方法に分けました。まず、「リスクの転嫁(てんか)」です。「転嫁」とは移し換えると言うことです。自分では対処できないことは、第三者のところに移し換えてしまえばいいのです。

たとえば、小さな子供のいる家庭で、ご主人が突然亡くなった場合などがそれに当たります。社会保障制度がありますから、遺族基礎年金や遺族厚生年金などを受け取ることができます。しかし、それだけではとても足りません。

残された家族の生活費、子供の教育費など、将来にわたって数千万円のお金が必要になります。この金額を貯蓄で用意するのは、なかなか大変だと思います。自分だけではとても対処できないかも知れません。このような大きなリスクは、自分では対処できないので、人に任せましょう。つまり保険に、そのリスクを肩代わりしてもらうのです。

これが、大きなリスクに対する賢い保険の使い方です。ですので、子供が大きくなれば、そのリスクは小さくなるので、保険は必要なくなります。その他の大きなリスクとしては、自動車事故、火事、水害、他人に対しての損害賠償などが考えられますね。これらも保険で備えるべきものです。

リスクの保有

次に大きなリスクではなく、中程度のリスクの場合を考えてみましょう。

滅多に起こらないけれど、たまに起こること──。

多くの人が病気やケガでの入院というリスクが思いつくでしょう。入院するというのは、非常に困った事態には変わりはありません。そこで、経済的なリスクについても考えてみると、じつは治療費の負担はそれほど大きくはありません。なぜならば、健康保険制度があるので、自己負担は原則3割です。しかも高額療養費制度があるので、どんなに治療費がかかったとしても、一般的な所得の人は月額9万円以上かかりません。

入院期間も短くなっていますので、20万円の貯蓄があれば十分に対処できます。20万円ぐらいの出費でしたら、なんとか対処できる家庭が多いのではありませんか。つまりいざというときの出費と日々の保険料を考えてみて、この場合は、リスクを移し換える(転嫁)必要がないということになります。
この程度のリスクなら家計の中で保有しても問題はないはずです。わざわざ保険で備える必要はありません。

おわかりのように、「リスクの保有」で重要なのは「貯蓄」です。ある程度の貯蓄があれば、ちょっとしたトラブルや事故があったとしても、解決することができます。

もし貯蓄が少ないとすれば、借金をしたりしてさらに損失を広げてしまう可能性だってあります。しかし、だからといって中程度のリスクに対して、保険で備えるのは合理的ではありません。なぜなら、保険というのは、契約した要件以外には使うことができないのです。介護保険も介護にしか使えませんし、医療保険も、病気やケガにしか対応できず死亡保障はありません(一部対応している商品もある)。

すると、いろいろな中程度のリスクにいちいち備える必要が出てきてしまいます。そう考えると、それらに対応できるのは「貯蓄」が一番よいということになります。

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