はじめに

非常にタイミングの悪い時に、小欄執筆の順番が回ってきました。今日はなんと言っても、FOMC(米連邦公開市場委員会)の話題に触れないわけにはいきません。なにしろFRB(米連邦準備制度理事会)が利下げに踏み切るのかを探る重要な会合です。後世から見れば、歴史的なFOMCになると言っても過言ではありません。

数時間後にはFOMCの結果が判明しています。まったく的外れのことを書いていたら、どうぞ笑ってお許しください。


現状は市場の期待が行き過ぎている

FOMCの結果予想ですが、利下げはなく、FOMCメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)も市場の期待には届かないでしょう。というのは、市場の期待が行き過ぎているからです。

フェデラルファンド(FF)レート先物のイールドカーブは年内0.75%程度の利下げを織り込んでいます。1回の利下げが0.25%とすれば、3回に相当します。

前回3月のFOMCにおける政策金利の見通しは 2019年は据え置き、2020年に1回の利上げ、2021年は据え置きで、長期の中立金利は2.75%となっていました。利下げどころか、緩やかな右肩上がりの想定です。

それを今回、「利下げ含み」に変更するのは、中央値としてせいぜい0.25%下げる、すなわち年1回の利下げを示唆するのが精いっぱいのところではないでしょうか。

「予防的利下げ」が独り歩き

それでは踏み込み不足と映り、市場は失望するでしょう。それでも僕は、市場の混乱は一時的にとどまると考えています。

今回のFOMCの結果だけでなく、仮に7月のFOMCで利下げが見送られたとしても――見送られる公算が高いと思っていますが――長期金利急騰、株価急落は起きないと思います。

米国の利下げ期待が高まったのは、トランプ政権が対中国への制裁関税で強硬的な姿勢を示し始めてからです。5月末のリチャード・クラリダ副議長の発言を契機に、一気に利下げ観測が急上昇しました。

同副議長はニューヨーク経済クラブでの講演後に、「インフレ率が中央銀行の目標の2%をすでに下回っている状況にある中では、失望すべき経済データを待つまでもなく、リスクの高まりがFed(=FRB)が利下げを行うトリガーになりうる」と語ったのです。

クラリダ副議長はその条件として、”if it felt the need to act preemptively”(もしも予防的に行動する必要があると思われれば)と述べました。ここから「予防的利下げ」というキーワードが独り歩きを始めた感があります。

ちなみに、予防的利下げの例として1998年のアジア通貨危機を挙げる人が少なくありませんが、あの時はLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)破綻という特殊事情があり、「予防的利下げ」どころか「緊急避難的な利下げ」であったので、状況がまったく違います(参照:新潮流「物忘れ」)。

<写真:ロイター/アフロ>

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