はじめに

1月上旬、ラスベガスで恒例の「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」が開かれました。

世界最大の技術見本市での注目ポイントは、ここ数年、モビリティ、特に自動運転です。日本でも、自動運転関連の話題が新聞に掲載されない日はないといっても過言ではありません。

しかし、キラキラの未来の車に、「自分にはリアリティがない」と思っている人も少なくないのが実情です。社会の動きと、今後利用者となるであろう消費者に、少なからぬギャップがある自動運転。

一体なぜ今、自動運転がこれほど注目されているのでしょうか。


自動運転の実用化の準備が進められている

現在、日本では政府主導で自動運転の実用化の準備が進められています。昨年は自動運転車の走行を可能とするべく道路交通法が改正されました。内閣府や経済産業省、国土交通省等の中央の官公庁と、地方自治体、民間企業が連携して、全国各地で自動運転の実証実験も実施されています。

今年開催されるオリンピック・パラリンピックは、世界中から集まる人たちに、日本の自動運転技術をPRできる大きなチャンスでもあります。それに向けて、昨年10月15日から、東京臨海部における大規模な実証実験も始まりました。

実証実験は、中央の都市部だけでなく、地方都市や観光地、高齢化や過疎化の進む地域など、多様な場所で様々な形態で行われています。

自動運転に期待される社会課題解決

産業界の大きな話題としてとりあげられているように見える自動運転ですが、自動運転には様々な社会課題の解決が期待されています。それらはいずれも、私たちの日常生活に密着した、暮らしに大きくかかわるものであるといえます。

自動運転の発展と普及の“道しるべ”ともいえる「官民ITS構想・ロードマップ」の中で、自動運転に対する社会的な期待が整理されています。

まずは、「人間よりも、より安全かつ円滑な運転」を実現することによる、道路交通の抱える課題の解決です。具体的には、「交通事故の削減」「交通渋滞の緩和」「環境負荷の低減」です。

交通事故による死亡者は減少傾向

交通事故については、1990年頃に年間の交通事故死者数が1万1千人を超えていたのが、年々減少を続け、最新データでは3,215人まで減少しました(図表)。

図表 交通事故死亡者数の推移と高齢者(65歳以上)の占める数・割合

資料:警察庁資料より作成

ピークの頃には1万7千人近くの交通事故による死亡者がいたことを考えると、大幅な減少であることがわかります。

政府の中央交通安全対策会議では、2020年までに交通事故での年間死者数を2,500人以下にしたいとの目標を掲げてきました。これが達成できるかは定かでありませんが、着実に交通事故死者数は減少しています。

減少の要因としては、シートベルトやチャイルドシートの着用などの習慣の定着化など、複合的な要因はありますが、自動車の安全性が高まったことによる点は見逃せません。技術による安全性の向上は、高齢ドライバーが多い日本において、喫緊の課題ともいえます。

2021年11月からは、衝突被害軽減ブレーキ(一般には「自動ブレーキ」と言われていますが、絶対確実に止まるわけではないという技術的な限界から、「自動ブレーキ」の名称利用は避けられる傾向にあります)を国産新型車から段階的に装備を義務付けるなど、高齢運転者の交通事故削減を視野に、自動車の安全性向上に向けたさらなる試みも、世界に先駆けて行われています。

こうした技術は、「自動運転」技術の重要な一部を成しています。

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