はじめに

以前、このコラムでアマゾン・ドット・コムがアメリカの食品スーパー大手・ホールフーズを傘下に収めたことについて書きました(全米の小売店が震えた、アマゾン食品スーパー買収の裏側)。

アメリカでは“アマゾン・エフェクト”といって、アマゾンが成長することによって多くの小売業の業績が下がるというメカニズムが起こっています。

既存の小売業と比べると圧倒的に生産性に優れ、消費者からも支持されているアマゾンと競争するためにはどうすればよいのか? 先日、グーグルとウォルマートが手を握るという報道がありました。これは、そのひとつの解になるのかもしれません。


グーグル対アマゾンのスピーカー戦争

アメリカの小売最大手ウォルマートは23日、グーグルとインターネット通販事業で提携することを発表しました。

まず始めるのは、声で買い物ができるサービス。即日配達の「グーグル・エクスプレス」に、数十万点の商品をウォルマートが提供。グーグルが販売する人工知能を採用したスマートスピーカー「グーグルホーム」に話しかけることで、この商品を注文できるようになります。

両社が手を組んだ最大の理由は、ライバルであるアマゾンがこの領域に着々と侵攻し始めているから。

これまでも折に触れて記事にしてきましたが、この流れは「アマゾンエコー」というスマートスピーカーが発売されたことがきっかけです。

スマートスピーカーはスマホに代わって家庭内の中心的な家電になると言われている商品で、これを使ってテレビやエアコンをコントロールするだけでなく、インターネット経由でニュースや天気予報などの情報をやりとりできるすぐれもの。

そして高度な人工知能による言語解析機能によって、スピーカー経由での買い物サービスが拡がり始めているのです。

ホールフーズ買収で先行するアマゾン

ある調査によると、エコーユーザーの半分以上が音声を使って買い物をした経験があり、その多くがリピーターになっているといいます。

一方、人工知能のライバル企業であるグーグルはアマゾンに2年遅れたかたちで、グーグルホームによるアマゾン追撃を始めました。

そこに新たな衝撃をもたらしたのが、アマゾンが生鮮食料品大手・ホールフーズを買収するというニュースでした。スマートスピーカー発売で同じ土俵に並び、グーグルが猛攻をかけようとしたところ、さらにアマゾンは一歩先の手を打ってきたというわけです。

この買収に衝撃を受けたのは、グーグルだけではありません。全米のスーパーマーケットやGMSと呼ばれる大規模小売店は、すべて強い危機感を抱きました。

その理由は、アマゾンはホールフーズを買収した結果、実質的にアメリカ各地に生鮮食料品の倉庫を設備投資もかけずに確保することができたからです。

このままでは近い将来、消費者はスピーカーに向かってしゃべるだけで買い物を済ませてしまうことになりかねません。

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