はじめに

スーパーの売り場で「特売」の目玉商品となる傾向が強く、店頭価格が年々下落傾向にあった納豆。

今、そんな納豆の売れ行きが、過去最高を記録するほどに好調です。背景には“野菜が高いと納豆が売れる”という意外な法則が関係しているようです。


納豆の消費、過去最高を記録

日本の食卓には欠かせない納豆。

納豆の生産量について正確な統計はありませんが、大豆の消費量から換算すると、パックにして1年におよそ62億個の納豆が生産されている計算になるそう。

そんな納豆の市場規模が昨年、過去最高を記録。全国納豆協同組合連合会(納豆連)によると、2016年の納豆の市場規模は前年比16%増の2,140億円にも上りました。

納豆連の調査では、25.1%の人が「以前に比べて納豆を食べる頻度が増えた」と回答しています。頻度の高まりにともなってか、一世帯あたりの納豆消費金額も前年より5%アップし、3,836円になりました。

過去最高の消費となった要因について、納豆連の緒方さんは次のように話します。

「消費者動向調査によると、消費者は食に対して“健康”や“経済性”を強く求めています。そうした消費者の志向により、手頃な価格で栄養価の高い納豆が支持されているのだと思います」

国産大豆の市場も拡大傾向に

なかでも消費者に支持されているのが、国産大豆を使用した納豆です。

「国産大豆のなかでも、とくに納豆用小粒は割れのない完全粒形を求められるため、農家はとても手間をかけて栽培します」(緒方さん)。

また、国産大豆を使用している納豆は高価格帯のものが多く、市場に占めるシェアはわずか12~14%と少ないですが、国産志向の強まりが後押しし、売れ行きは好調といいます。

国産大豆使用の納豆を製造する、あづま食品に話を聞くと「2015年の春頃から、国産大豆を使った商品が平均5%程度で伸長傾向にあります」と営業部の藤井さん。

“野菜が高いと納豆が売れる”は本当?

そして科学的・数値的な根拠となるデータはないとしながらも「野菜が高い時期には納豆の売上が伸びる傾向を感じております」と、藤井さんはおもしろい法則を教えてくれました。 

納豆の消費額が過去最高を記録した昨年は天候不順のため「キャベツ」(前年比169%)、「トマト」(同132%)、「大根」(同142%)と野菜の価格が高騰していました(農林水産省の食品価格動向調査・平成28年11月28日週)。

“野菜が高いと納豆が売れる”のは本当なのか? 三井住友アセットマネジメント・調査部・チーフエコノミストの宅森さんは、こう言います。

「相関係数でみると、生鮮野菜の価格と納豆の購入額は関係がないと言えます。しかし、“生鮮野菜が極めて高いと納豆が売れる”と感じられるデータはあります。

2000年1月~2017年6月までの納豆の月平均の購入額は、1世帯あたり310円になります。そのうち野菜が極めて高騰した月が8回あり、その月の購入金額の平均は312.4円。8回とも必ず310円を上回るわけではありませんが、平均すると2円程度高くなっているのです。

さらに、2012年1月以降、納豆の購入額はひと月に約0.85円ずつ上がっているので、より食べるようになっている傾向はあります。背景には、関西などこれまで納豆を食べなかった地域の人たちも食べるようになったこと、“納豆は体にいい”という理解が進んだことがあるのではないでしょうか」

安定した価格と供給、高い栄養価を誇る納豆。健康志向の追い風をうけて、改めてその存在が見直されているようです。

(文:編集部 土屋舞)

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