はじめに

ホンダの原動機付自転車「スーパーカブ」の累計生産台数が1億台を超えました。国内の「カブ」主力工場である熊本製作所では、19日、八郷隆弘社長がスーパーカブにまたがりながら笑顔で報道陣に応える記念イベントを開催。

カブはホンダの創業製品であると共に、ホンダのなかでも大きな利益を叩き出す収益源でもあります。今回はカブをめぐる経営事情について一緒にみていきましょう。


消えていくバイクと今でも人気の定番バイク

今年8月26日、青山にあるホンダ本社ビルに100人の二輪ファンが集いました。ホンダの小型原付「モンキー」の最終生産分を購入するための抽選会です。

1967年に発売され、50年間愛されてきたこのモンキーもいよいよ販売終了。最新モデルの価格は32万6,500円。それでも500台の限定生産に4万5,333通の申し込みが殺到するプレミア人気となりました。

発売当時のモンキーの価格は6万3,000円。私が20代だった1980年代には、“HY戦争”と呼ばれたホンダ(H)とヤマハ発動機(Y)による二輪車の安売り合戦があったため「原付は自転車よりも安い」という現象も起こりました。

その頃は3万円あれば新型の原付スクーターが買えるということで、原付ブームも巻き起こりました。

現在では、安売りもブームも収束。原付の価格は1台20万円程度となり、実用商品として売られています。

そして、その原付の代名詞であるホンダ「スーパーカブ」が累計生産数1億台を超えたとして話題になっています。日本一売れている自動車・トヨタの「カローラ」ですら累計4,500万台ですので、この数字からは、いかに二輪の世界で同機種が愛されてきたのかがわかります。

このカブに関連して、ホンダの事業についての興味深い記事が出ていたので紹介したいと思います。

ホンダの二輪事業の収益性の高さは圧倒的

ホンダの事業の興味深い点、それは四輪事業と二輪事業の収益性の違いです。

アメリカにおけるシビックなどの成功で世界ブランドとなったホンダの四輪事業。販売台数では世界第7位へと成長しました。売上高は10兆円を超え、2016年度の営業利益は5,011億円を叩き出します。

一方、二輪事業は売上高1兆7,000億円と四輪事業の2割にも満たない規模です。しかし、営業利益は1,707億円。毎年10%前後の利益率を堅調に維持しています。

四輪事業と比べると売上高はかなり少ないのにもかかわらず、二輪事業は四輪事業の3分の1もの利益を生み出しているのです。

二輪事業の収益性が高い理由のひとつは、世界シェアの高さです。

ホンダは二輪界の世界トップでシェアの3割を握っています。とくにアジアで強く、ベトナムとタイでのシェアは7割。ベトナムではバイクのことを「ホンダ」と呼ぶほどです。

アジアで低所得者層が最初に手にする乗り物は二輪です。二輪で新興国に進出すれば、ほかの自動車メーカーよりも早くブランドを浸透させることができます。そして四輪でも儲けられるようになる。

これがホンダの「戦略の方程式」だったというのです。

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