はじめに

2022年度第3四半期の決算発表が一巡しました。改めて今回の決算を振り返ってみましょう。


日本電産だけでなかった大幅下方修正

今回の決算発表シーズンは、先陣を切った日本電産の大幅下方修正というショッキングな発表で幕を開けました。純利益が前期比56%減の600億円になる見込みだとして、従来予想である22%増の1650億円から1000億円超も引き下げたのです。この下方修正を受けた翌営業日の株式市場で、日本電産の株価は5.4%安の7145円で取引を終了。この日の東証プライム市場で値下がり率トップとなりました。

この下方修正自体も衝撃的でしたが、市場の不安を一段と高めたのは、決算説明会における永守重信会長の話でした。永守会長は業績の下方修正の背景を説明する席で「モーターだけが落ちて、他の製品が落ちないということはない。モーターは経済指標だ」と述べました。さらに「マーケットのダウントレンドを正しく理解していない。『日本電産だけが悪いのではないか』と疑心暗鬼になっているようだが、この後の各社の決算発表をみれば、少しは理解が進むだろう」と続けたのです。果たして、その後、住友化学も日本電産と同額の1050億円の下方修正を発表しました。村田製作所や京セラなどの電子部品メーカーやデンソー、アイシンといった自動車部品メーカーでも下方修正が続きました。

海外の景気減速が響くグローバル企業での下方修正が目立ち、日本経済新聞によれば2月時点で下方修正が2割を超えるのは、東日本大震災後の12年3月期予想を集計した時(35%)以来だといいます。

上場企業の業績は本当に厳しいのか

このように非常に苦戦が続いた2022年度第3四半期の決算発表ですが、2月上旬に日本経済新聞が今回の決算を集計した結果を報じました。見出しには「上場企業、10〜12月25%減益 経営者は需要減退警戒」とありました。日本経済新聞が集計した3月期決算企業の2022年10〜12月期の純利益は前年同期比25%減の7兆8900億円。減益は2四半期ぶり。最終損益が前年同期比で減益または赤字だったのは全体の55%を占め、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きかった20年7〜9月期(65%)以来の高水準だったと報じています。

この記事を読んだ第一印象としては、「上場企業の業績は厳しい」というものでしょう。無理もありません。しかし、この記事は最終利益についてしか触れておらず、全体観をうまく捉えきれていないと感じます。

ここでQUICKが集計した結果をごらんください。2月10日までの結果を集計したものです。TOPIX採用銘柄を対象とすると当期利益は22%減益で日経の集計と(当然ですが)ほぼ同じです。

しかし経常利益を見ると、減益幅が縮小しています。そして営業利益では、なんと増益です。売上高は2桁のプラス。つまり、本業の稼ぎを示す営業利益ベースでは増収増益ということです。さらに言えば、日本を代表する時価総額トップ30企業で構成されるTOPIX Core 30 では営業利益は約11%増益、2桁の増収増益ということです。

営業利益の段階までで増益が確保され、経常利益段階で減益となっているのは営業外費用、例えば支払金利の増加や金利上昇による海外子会社ののれんなどの減損処理が計上されているからです。また、さまざまな取引による為替差損も営業外費用に計上されます。例えば、売上を認識した日と実際の入金決済があった日のタイムラグの間に為替がマイナス方向に動いた場合の損益などです。これだけ為替の変動が大きいとばかにならない額となり、例えばトヨタ自動車では10-12月期に1630億円もの為替差損を営業外の費用に計上しています。

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