はじめに

2022年より相次ぐ食料品や光熱費の値上げ。給与が上がればいいものの、物価高に比例してあがった人はごく一部でしょう。「家計を見直さないと…」そう考えている方も多いのでは?

FPの山中伸枝氏のところにきた相談者もその一人。物価高の影響で家計が悪化しているといいます。日々節約しているものの食費や光熱費を切り詰めるには限界があり、この先の家計改善にお悩みのようです。山中氏はどのように回答したのでしょうか。

最初にやるべきこと「公的保険の受取額をチェック」

万が一に備える「保険」には二種類あります。公的保険と民間保険です。民間保険は公的保険では不足する部分を補うためにありますから、まず取り組むべきことは、公的保険の受取額を知ることです。これは公的保険アドバイザーなど、保険の専門家に「我が家の場合、公的保険はどんな時にいくらもらえますか?」と聞いていただければ結構です。信頼できる保険の専門家であれば、公的保険の受取額を教えてくれた上で、その方に必要な民間保険を提案してくれます。あるいはファイナンシャルプランナーなどお金の専門家に相談してみるのも良いでしょうし、年金事務所で確認するのも一考です。

公的保険とは、健康保険、介護保険、年金保険などを指します。会社員が負担する保険料は、給与の約15%。例えば給与30万円であれば4万5,000円も保険料を負担しています。公的保険は私たちの暮らしにおける様々なリスクを保障しているにもかかわらず、その内容も知らずに民間保険に重複して加入したり、逆に公的保険では不足している部分を民間保険で補えていなかったりすることもあります。

公的年金の保障内容は「ねんきん定期便」で確認できます。こちらは今回、ご相談者様の情報を基に作成したものです。

ねんきん定期便の「2.これまでの年金加入期間」には、20歳以降のご相談者様の年金加入歴が掲載されています。「3.これまでの加入実績に応じた年金額」とは、現時点での暫定的な老齢年金額という意味です。年金といえば、年をとった時の老齢年金だけをイメージする方も少なくありませんが、被保険者が死亡した際に家族の暮らしを守る「遺族年金」、重い障害を負った時の暮らしを守る「障害年金」があります。公的保険の知識があれば、ねんきん定期便の情報を用いてそれらの受取額も試算できます。

では、万が一ご相談者様が亡くなった場合の、遺族年金を試算してみましょう。遺族年金は国からの生命保険ですから、もしこれだけで万が一の暮らしが成り立つのであれば民間保険は不要です。

会社員のご相談者様が万が一亡くなると、配偶者様には遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。遺族基礎年金は子どものための保険なので、子どもが高校を卒業するまで(18歳となる年の年度末まで)支給されます。遺族厚生年金は配偶者の暮らしを支えるための保険なので、原則終身で支給されます。また、子どもが高校を卒業して遺族基礎年金が終了すると、厚生年金から配偶者様への手当として中高齢寡婦加算が支給されます。配偶者様が65歳になると、老齢年金を受給しますから、まずは子どもが独立するまでの万が一の保障を考えます。

試算の詳細は割愛しますが、ご相談者様はねんきん定期便の情報から図のように遺族年金が受け取れることが分かりました。妻が90歳まで生きた場合、遺族年金と老齢基礎年金の総額は6,640万円です。つまりこれだけの保険金をすでに国で準備してくれているのです。

必要保障額を計算する

年収500万円のご相談者様ですが、税金と社会保険料を差し引いた額、可処分所得は約380万円です。つまり、この金額が生活するのに必要なお金と考えることができます。

では万が一ご相談者様が亡くなった場合、これまで通り年間380万円が必要なのでしょうか?

まず年間約100万円の住宅ローンの支払は団体信用生命保険に入っているのでご相談者様が亡くなったら支払う必要がなくなるお金です。また他にも不要となる支出もありますから、万が一の際に必要なお金は年間約240万円と見積もります。その後子どもが独立して妻1人になった際の必要な生活費を年間約200万円と見積もりました。

次に公的年金だけで、生活がまかなえるのかを考えます。万が一の際の遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金を足すと年間約140万円です。この遺族年金は子どもが高校を卒業するまで継続します。その間のこされた家族が必要な生活費は年間約240万円ですから、その差額は年間約100万円、これが公的保険ではまかなえない部分です。

そして、この公的年金ではまかなえない部分をどうカバーするのかを考えていきます。年間約100万円の不足は子どもが18歳になるまで続きます。さらにその間に子どもの教育資金も準備しなければなりません。

準備すべき教育資金は、日本FP協会「子育て世代の教育費」より、まだ子どもが小さく進学先が決まっていないため、私立大学へ進学すると仮定し、入学金と授業料などあわせた大学費用を約500万円とします。

するとこの間、公的年金ではまかなえないお金は、以下のように計算することができます。

【公的年金でまかなえないお金】
100万円 × 16年 + 500万円 = 2,100万円

ご相談者様の配偶者様は、子どもが小さいので今は働いていませんが、子どもが高校を卒業したら、就労収入を増やし、ご自身で老後に備えるお考えです。従ってその後の公的年金ではまかないきれないお金については、配偶者様の就労で備えることにしました。

そのため、民間保険で準備するべき必要保障額は子どもが高校を卒業するまでの約2,100万円と見積もることができます。

保険商品の選び方

万が一の際、民間保険でまかなうべき金額「必要保障額」が決まったら、具体的な保険商品を見ていきます。保険商品の比較をする際は、できるだけ条件をそろえて検討します。

例えば死亡保険は、被保険者が亡くなった際の保障ですから今回のケースでは保険金は2,100万円、保障期間は16年です。ご相談者様は35歳ですから、これらの条件でいくつかの保険商品の見積もりを取りましょう。保険料の支払方法はまずは月払いで比較すると良いでしょう。

条件が決まれば、保険料をチェックします。余命6カ月以内と判断されるときに保険金が支払われるリビング・ニーズ特約は当然ついているべきですが、最近はこの他に、契約者が三大疾病になった場合にその後の保険料の支払が免除となる特約を付加できる商品もでてきました。大きな病気をすると、これまでと同じように働いて収入を得ることが難しくなりますので、こういう特約がつけられる保険は加入者には大きなメリットとなります。

さらに付帯サービスといって、例えば、契約者向けに医療に関する電話相談ができたり、万が一の時の手続きについて電話相談ができたりするのは、商品を選ぶ際のプラスの要因です。各種手続きも、ストレスなく迅速に行えるかどうかも、同様に確認したいポイントです。