はじめに

子宮がんや乳がんなど女性特有のがんは、20代~40代など若い年代でも発症するのが特徴です。実際、日本対がん協会「がんの部位別統計」 によると、2019年の部位別がん罹患数は乳がんが9万7142人、子宮がん(子宮頚がん+子宮体がん)が2万9136人と非常に多く、身近な疾病であることがわかります。

読者の中にも、不安に感じている方や、万一の備えをしておきたいと考える方もいるでしょう。そこで今回は、がんの経験を乗り越えて活躍されているフリーアナウンサーの藤田瞳さん(43)と、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さん(54)に、治療のことからお金のことまで、率直にお話いただきました。お二人の対談を通して、がんにどう備えるとよいのか考えていきましょう。

藤田瞳(写真右)
松竹芸能所属のフリーアナウンサー。京都教育大学卒。2002ミス京都コンテストグランプリ。2003ミス日本コンテスト関西代表。 BBC「滋賀県議会ダイジェスト」などに出演中。子宮頚がんを患った経験から、講演活動「藤田瞳のキャンサーギフト〜子宮頚がんと共に〜」を行う。

黒田尚子(写真左)
CFP® 1級ファイナンシャルプランニング技能士、NPO法人キャンサーネットジャパン乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格。自らの乳がん罹患体験をもとに、がんをはじめとした病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行う。現在、聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO 法人「がんとくらしを考える会」のお金と仕事の相談事業の相談員、城西国際大学・経営情報学部非常勤講師も務める。2023年4月から一般社団法人「患者家計サポート協会」の顧問に就任。


子宮頚がんと診断された時の状況や治療内容

藤田瞳さん(以下、藤田):私の場合、子宮頚がんの検診で高度異形成という、がんの前段階の状態だと診断されたのが33歳の時です。最初は、円錐切除術という手術を受けました。局所麻酔の日帰り手術で、子宮も温存できる手術なので、これで取り切れたらよかったのですが…、がんが浸潤していて取り切れず、次の手術が必要ということになりました。

その手術は、子宮摘出という出産の可能性を失うことに繋がるもの。でも、私は子どもをもちたいという気持ちが強かったんです。それで、妊娠する力(妊孕性)を残すことができる、広汎性子宮頚部摘出術という手術をしていただきました。

がんに罹患して感じた仕事の必要性

藤田:がんと診断されると、短い期間でたくさんのことを判断しなければならないし、人生のプランも突然変わってしまいます。当時は夜も眠れず、精神的なダメージはとても大きかったです。

黒田尚子さん(以下、黒田):どの治療を、どの病院で、どの術式でやってもらうのか、自分で選択肢を模索しなければなりませんからね。きのうまでは健康だったのに、告知をされた途端に「がん患者」という別の枠組みに入れられたような感じ。それまで見ていた景色が急に変わってしまう。

藤田:私はフリーのアナウンサーなので、仕事を失うのではという不安もありました。なので、治療方針がはっきりして、復帰の目処が立ってから仕事現場の人に伝えなくてはと、そういうところにも気を使いました。

黒田:そういう時に「身体を第一に、治療に専念してゆっくり休んで」と言われるのも、けっこう辛いんですよね。

藤田:そうなんです。優しさや思いやりからくる言葉だということは、よくわかるんです。でも、治療だけに専念するのではなく、むしろ仕事を続けられる方が精神的にも楽。そういう人もいるよっていうことを、わかってくれるといいなと感じました。

黒田:私も乳がん経験者であり個人事業主なので、よくわかります。病気の上にキャリアも途絶えそうになっては、余計に辛くなりますから。病気との向き合い方は人それぞれ違うので、一律ではない寄り添い方ができるといいと思います。

術後の仕事復帰や生活、体調

藤田:幸いにも術後は順調で、摘出術を受けた後にラジオで復帰しました。お休みに入る前にも、自分の口でリスナーの方々に子宮頚がんの治療をすることは伝えていて。自分の経験を通して、がんのことを知ってもらいたいという気持ちがあったんです。

体調については、リンパ浮腫というむくみの症状に悩んだり、寒気を感じやすくなったりといった変化がありました。排泄障害なども出てくるので、毎日トレーニングするように、一歩一歩進むという感じで過ごしていましたね。

黒田:私は、ホルモン治療中に顔面の目立つところに薬疹がでたり、胃腸炎になったりと、やっぱり体調は悪くなりました。患者さんの中には、ホルモン治療でホットフラッシュ(のぼせ、ほてりが起きる症状)やめまいを起こす方もいます。がんの部位や治療の内容などで個人差もありますが、術後は体調と相談しながら生活することになります。

藤田:再発チェックのため定期的な検診も欠かせませんが、そのたびに不安で。特に再発のリスクが高いと言われる術後5年が過ぎたときには、ホッとして涙が出たのを覚えています。その後は幸いにも、追加の手術などもなく過ごしています。