日に日に寒さも増して、暖かいお風呂が恋しい季節になりました。ついつい長風呂してしまいそうですが、入浴は方法しだいで健康にさまざまな影響を与えます。ひいては、生涯を通じた医療費や介護費用にも大きな違いを生むようです。

はたして、どんな入浴方法が身体にも財布にもやさしいのでしょうか。


長風呂を好む地域は医療費が高い

ガス機器大手のリンナイが全国の960人を対象に実施した、「入浴習慣」に関する意識調査。その一環として行われた「地域別の浴槽につかる時間」と、厚生労働省調査の「都道府県別の1人当たりの実績医療費」とを照らし合わせると、意外な関係性が見えてきました。

浴槽につかる時間が18.5分と一番長い九州地域と、それよりも5.2分短い中部地域では、1人当たりの医療費に約7.8万円もの差があることがわかります。浴槽につかる時間が長いエリアのほうが、1人当たりの医療費が高くなる傾向がみられたのです。

この結果について、調査を監修した東京都市大学・人間科学部の早坂信哉教授は、簡単に1つの因子が医療費に直接関連しているとは断言しにくいとしたうえで、2つの要因が考えられるとしています。

1つは、体調が悪い人(医療費が高い人)が入浴に体調改善効果を求めて長時間入浴になっていること。「一般的に長く入浴するのが体に良いと思っている方は少なくありません。そのため、たとえば腰痛がある人は患部を温めることにより症状が一時的に緩和するので、つい長風呂になってしまうことがあります」(早坂教授)。

もう1つは、長時間入浴そのものが体調に悪影響を与えることだといいます。「長時間の入浴は肌を乾燥させたり、脱水をひき起こしたり、ひどい場合は熱中症になるなどの危険もあります。入浴は健康に良い点も多いのですが、方法を誤ると体調不良につながることもあります」(同)。

「健康手抜き風呂」を実践する人ほど幸福度が高い

方法によっては毒にも薬にもなる入浴。入浴時間と入浴温度という2つの軸で、入浴習慣を「健康手抜き風呂」「江戸っ子風呂」「熱中症風呂」「のんびり長風呂」の4つのタイプに分類すると、入浴方法と健康状態の相関関係が見えてきました。  

早坂教授が「健康効果がある」と推奨するのは、入浴時間10分以下×湯温40度以下の「健康手抜き風呂」。浴槽につかるのは10分以下のお手軽な“手抜き”の入浴法で十分だといいます。

調査結果によると、「健康手抜き風呂」を実践しているほど、他に比べて肩こり、頭痛、便秘、汗かき、薄毛と多くの項目において悩んでいる人が少ないということが明らかになりました。さらに、現在の生活を幸福と感じている人が多いという結果も出ました。

「40度までのぬるま湯はリラックス効果があり、結果として筋肉の緊張を和らげ、血圧を下げ、胃腸の動きを促進し、血流も改善するなどの健康効果があります。正しい入浴法は睡眠にも良い影響を与え、心身の調子が整うので、結果として幸福度が高まるのかもしれません」(早坂教授)

逆に入浴温度が高いと交感神経が興奮し、体が緊張するため、41度以上にして入浴する「熱中症風呂」「江戸っ子風呂」は高血圧性疾患のリスクが高いようです。

介護費用は平均で年90万円超

毎日入るお風呂だからこそ、正しい入浴法が長生きの秘訣となることもあるのでしょうか。早坂教授は、毎日の入浴は健康長寿に関係がある(要介護になりにくい)という研究報告はすでにあるとしたうえで、次のように話します。

「入浴時間までは計測していませんが、正しい入浴は健康長寿に関連があるのではないかと考えています。理由は、温熱効果による血流の改善、身体の柔軟性の向上(ケガをしにくくなるため骨折リスクが軽減する可能性)、痛みの改善などの入浴効果の積み重ねによるものです」

生命保険文化センターの「平成27年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、公的介護保険サービスの自己負担費用を含めて、介護に要した費用のうち月々に支払っている(いた)費用をみると、1ヵ月当たり平均7.9万円。年間に換算すると94.8万円にもなります。

もちろん、お風呂は健康寿命を考えるうえで1つの要因でしかありません。ただ、「健康手抜き風呂」を毎日実践することで少しでも健康寿命を延ばすことができれば、幾分かの医療費抑制につながることになりそうです。

(文:編集部 土屋舞)