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私たち一般市民は「仮想通貨」にどう向き合うべきか

ついにビットコインが100万円超え

11月26日、ビットコインの価格がついに1ビットコイン=100万円を突破したというニュースが駆けめぐりました。1月には10万円程度で取引されていたので、1年足らずの間に10倍に価格が上昇したことになります。

また、ビットコインに次ぐ時価総額を有するイーサリアムは、同じ時期に50倍の価格上昇を記録しています。

こうした急激な価格上昇を見た投資家が仮想通貨の取引に続々と流入し、さらなる価格上昇を招くという状況は、典型的な「バブル」の様相を呈しているという指摘もあります。こうした熱狂的な市場の中で、私たちは仮想通貨とどう向き合えばいいのでしょうか。


価格変動の裏に相次ぐ法改正

一般に、市場で取引される資産の価格変動を説明することは簡単ではありません。株価や為替レートなどは、大きなニュースに対して、時には経済理論や理屈とは反対の方向に動くことも少なくありません。市場における価格形成には市場参加者の心理状態が大きく影響するためです。

仮想通貨に関していえば、今年、法制度の整備などの大きな動きが相次ぎました。

まず、改正資金決済法が4月に施行され、仮想通貨交換所を営む業者に対して金融庁への登録が義務付けられるとともに、利用者の保護のほか、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金対策のための態勢整備などが求められることとなりました。

また7月には、それまで仮想通貨の売買にかかっていた消費税が非課税になりました。さらに9月末には、11の仮想通貨交換業者が金融庁に実際に登録されたほか、19の事業者に対して登録に関する審査を行っていることが公表されました。

法整備が進んで他国から資金流入

これらは一見、規制の強化のようにとらえられるかもしれませんが、実は、顧客が安心して利用できる健全な仮想通貨市場を育成していくための環境整備として、金融庁が進めてきた政策です。

日本では2014年にMt. Goxという当時世界最大の仮想通貨取引所が破綻し、利用者の預かり金や仮想通貨が消失するという事件がありました。投資家が安心して利用できる環境や、わが国の仮想通貨市場の育成・成長のためには、こうした規制の導入が不可欠だったのです。

一方、中国などではマネーロンダリングや詐欺などの事件が多発し、仮想通貨取引所を閉鎖するという強硬手段に出る国も見られ始めました。

こうした中で、日本の仮想通貨に関する制度整備は先進的と評価されて注目を浴び、他国から日本への資金の流入も増えたといわれています。かつては全世界のビットコインの9割以上が中国で取引されていましたが、今年に入って日本が仮想通貨取引の世界最大シェアを有するようになっています。

利用可能な店舗はまだ少ない

それでは仮想通貨は「買い」なのでしょうか。仮想通貨は「通貨」という名称になっていますが、円やドルのような「法定通貨」ではありません。むしろ、一国の政府や中央銀行のような信用できる発行主体が存在しません。コンピューターのプログラムにのっとって発行され、運用されているという非常にユニークな方式となっています。

インターネット上では、ビットコインが決済や送金の手段として利用され始めていますが、まだそうした実取引での利用は極めて限定的です。

日本でも大手家電量販店でビットコインでの決済が可能となったという報道がありましたが、実際にビットコイン決済が可能な店舗は通信販売で54件、実店舗で218件にとどまっているようです(11月22日時点、jpbitcoin.com調べ)。

「実際に使えない」にもかかわらずこれだけ価格が上昇しているのは、まさに「まだまだ上がるだろう」と市場参加者が思っているためです。また、価格の上昇期待があるために、保有している仮想通貨は引き続き保有したいというインセンティブが働き、余計に決済や送金に利用したくないという悪循環もみられています。

分裂・ハードフォークのリスク

仮想通貨の価格上昇に伴い、「ハードフォーク」と呼ばれる分裂騒動も起きています。取引量の増加に伴って取引確定にかかる作業コストが増加しているほか、取引確定にかかる時間も長くなっていることが背景になっています。

こうした状況を改善するため、取引プログラムやルールの見直しが検討されていますが、その考え方の違いから、ビットコインは8月に「ビットコインキャッシュ」、10月に「ビットコインゴールド」、先週も「ビットコインダイヤモンド」に分裂。ビットコインから派生した複数の通貨が並立する状況となっています。

イーサリアムでも、海外のある取引所でハッキングのおそれのある重大なバグが見つかったとして185億円もの取引が凍結され、その抜本的な解決手段として「ハードフォーク」を行う可能性があるといった報道もみられています。

以前は、ハードフォークがあると、同様の仮想通貨が増加するほか、仮想通貨のガバナンスへの懸念などもあって、ハードフォークの行われる前にはビットコインの価格が一時的に下落する傾向がありました。

もっとも最近では、過去のハードフォークの局面での価格下落が一時的かつ限定的なものにとどまったことに加え、新たに発行される通貨を受け取る権利が得られるとして、むしろハードフォーク前に価格が上昇するといった傾向もみられるようになっています。

判断のカギは「利用可能性」

それでは仮想通貨は「売り」なのでしょうか。1つの重要な判断基準は、今後の仮想通貨の「利用可能性」でしょう。

つまり、現在の法定通貨が担っている決済や送金といった機能の一部を、近い将来、仮想通貨が担うようになると予想するのであれば、仮想通貨の時価総額はもっと増えていく可能性があります。

一方で、仮想通貨の利用可能性がなかなか広がらず、市場参加者の価格上昇期待だけで取引されるようなら、実態に乏しい資産としてどこかのタイミングで「バブル」が弾け、価格が暴落するリスクも相応に覚悟しなければならないかもしれません。

このほか、全世界で1000以上もあり、今も新たな仮想通貨が刻々と発行されている状況において、ビットコインだけが5割を超える時価総額を維持するのか、多くの仮想通貨が乱立する状況となるのか、といった視点も必要かもしれません。

いずれにしても、ビットコインをはじめとする仮想通貨は、価格のボラティリティが高い状況がしばらく続きそうです。また、投資家の価格上昇期待に便乗して、詐欺的な投資の勧誘も見られ始めています。

仮想通貨への投資を考える前に、少なくとも金融庁のホームページなどで、登録業者であるかどうかを確認するほか、取引をする際の留意点などにも目を通しておく必要があります。

さらに実際に投資をする際には、ボラティリティの高さや価格が暴落するリスクなどにも配慮し、自らのリスク選好に合った投資比率や投資金額を慎重に検討することが求められます。

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