ルネサンス期までに複式簿記を完成させて商業で栄えたイタリアですが、その後、ヨーロッパの覇権を握ることはありませんでした。自治都市を中心とした小国の集まりであるイタリアは、スペインやフランスのような大国と軍事的に渡り合えるような地域ではなかったのです。
『スムマ』が出版された1494年は、奇しくもイタリアが歴史上初めてフランスの侵攻を受けた年です。さらにはスペインからも攻撃され、半世紀以上に渡りイタリアは戦乱の時代に突入します。1530年代の後半にはナポリ王国を通じてスペインに支配されるようになりました。[1]
16世紀は、スペイン帝国がヨーロッパの覇権を握った時代です。16世紀後半にはポルトガルを併合し、そのアジア植民地も手に入れました。こうしてスペイン帝国は「太陽の沈まない国」となります。世界中に植民地があるので、24時間いつでも領土のどこかに太陽が出ているという意味です。
スペイン帝国興隆の背景には、新大陸で採掘された大量の金銀がありました。彼らは南北アメリカのインディオの王国を滅ぼしたのみならず、ヨーロッパ側の経済にも無視できない傷跡を残しました。それが「価格革命」です。
では、スペイン帝国の盛衰を追いかけてみましょう。