前回の記事では、広義の「簿記」の誕生が文明の起源にまでさかのぼることを書きました。では、狭義の「簿記」、すなわち複式簿記は、いつ生まれたのでしょうか?
歴史をふり返る前に、そもそも複式簿記とは何かを確認しておきましょう。
お小遣い帳や家計簿の場合、「現金」の増減という一つの面しか見ていません。しかし実際には、あらゆる経済的取引には二つの面があります。たとえば「現金」が増えるのは、収入があったときだけではありません。誰かからお金を借りたときには、「負債」と「現金」が同時に増えます。
また、同じ「現金」の増加でも、仕事で稼ぐ場合と自家用車を売る場合とでは、その性質が違います。前者では、仕事による「収入」と、口座のなかの「現金」とが同時に増えます。一方、後者では自家用車という「資産」が減って、代わりに「現金」が増えます。このように「現金」が増減するときは、他の「何か」が同時に増減しているのです。このことを指して、私は「あらゆる経済的取引には二つの面がある」と書きました。
少し、ややこしいでしょうか?