はじめに

切れ味、乗り心地など走りの味は格段に進化

走り出してすぐに自分の体の一部となった最新911。混雑した市街地でもすでに慣れ親しんだクルマになっていますから、スイスイと走ります。相変わらず乗り心地がよく、快適です。「良く出来たスポーツカーほど低速が快適」という私の判断基準は、ポルシェと付き合ったことで培われました。

ただ、エンジンが450馬力ものパワーであっても、ポルシェ独特の4WDシステムによって安定的な走りを実現したカレラ4Sは、相当に走りの限界地点が高いのです。当然のように一般路では切れ味鋭く、ガッチリと路面を掴んで高いレベルで走れます。一方で少し前に試した伝統的なRR(リアエンジン、リア駆動)の911カレラの運転感覚や走りの味の方が個人的にはより“ポルシェらしい”と感じました。もちろんベーシックなカレラの方が価格的にもリーズナブルです。

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制動初期はソフトだが、踏み込み量に応じて強烈に制動力を発揮する

ここでひとつ注意して欲しいことがあります。高度な仕上げのサスペンションやガッチリとしたボディ骨格によってコーナリング速度も高いレベルにあるし、驚くほど快適な乗り心地を実現してくれるわけですが、911は無茶をするとあっと言う間に裏切ることがあります。調子に乗って飛ばしていると、一気にスピン、なんてことがけっこうあります。まぁ、そこまでのレベルにまで走り込める人は本当に少ないでしょうが、もし幸運にもオーナーの権利を得ることができたらご注意下さい。

それにしても強烈なトラクションを生かした加速、極上のブレーキ、一体感のある操縦性など、なにをとっても上質な味わい。前回のランボルギーニ・ウラカンに乗ったときはまさにアドレナリン出まくりでした。クルマがいつも「もっと走れ走れ」と言ってきます。ところがこの911は「イザとなったらいくらでも速く走れるんだから普段はゆっくりと」と言われているようで、本当に気持ちの上で抑制が効いてくるんです。まさに日だまりのようなスポーツカーなんです。

こうして大満足の3日間が終わりに近づいてきました。いつも「返したくないな」と思う試乗車の筆頭に来ます。そこで恐る恐る車内にあった装備表を見てみました。車両価格1,804万8,100円。いやオプション価格を入れると「2,100万円オーバー也」。先ほどうかつにもお安いなどと言ってしまったベーシックなカレラでも1,359万7,222円です。私が1年落ちの中古の964を購入した時ですら、子供の教育資金にまで手を付けてしまって大騒ぎになったほどなのに、これはやはり夢の世界ですね。いつもポルシェ911に乗ってから「乗らなきゃ良かった」と後悔しますが、一方で「絶対に買ってやる!」と生きる糧になるのです。取り急ぎ宝くじだけは買おうと思います。

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