日経平均2024年最大の下げの日に4%上昇した「ツムラ」、その理由は?
株価が伸びるか、低迷か
2024年に入って急ピッチで上昇してきた日本株。さすがにこのスピード違反を株式市場の神様が見逃すわけもなく、ここ最近は、大きく下落しています。2024年3月11日には、日経平均株価が一時1,000円以上下落する大幅安となりました。この日の東証プライム市場の値下がり銘柄数は1,398、値上がり数は232と、ほとんどが下げている全面安の様相でした。ところが、株式市場がどんよりした日にもかかわらず、4%上昇したのがツムラ(4540)です。ツムラといえば、みなさん思い浮かべるのはバスクリンではないでしょうか? 多くの日本人のバスタイムの質を上げてくれた立役者です。残念ながら、バスクリンなど家庭用品事業は2008年に売却しており、現在のツムラは、100%医薬品メーカー。中でも医療用漢方薬では国内シェア8割を握っています。「良薬は必ず売れる!」という信念で創業されたのが1893年。そこから資材、原材料不足が深刻化する戦時中の苦難を乗り越え、創業130年を迎えています。現在の時価総額は2,800億円程度で中型株に分類されます。ここのところの株式市場のテーマといえば、大型の高配当株か、生成AI関連で、
株価うなぎのぼりの衛星放送「スカパー!」、躍進の理由は宇宙事業への変態?
投資家が惹かれる「変態企業」の魅力
この企業、こんなことしていたの?かつてのイメージとまったく違うビジネスを展開し、なかにはそちらのほうが事業のメインプレーヤーとなることがあります。たとえば、富士フイルム。かつては、テレビCMでもおなじみ、カメラのフィルムが稼ぎ頭でしたが、今や、X線画像診断や内視鏡、創薬などの医療分野がメイン事業です。目薬で有名なロート製薬は、「肌ラボ」などスキンケアセクターが急成長し、今やこちらが売上の70%程度を占めています。企業が事業内容を変化していく「変態企業」は、投資家としても非常に魅力があります。もちろん変態していくのは、それほど簡単ではありません。新規事業を開拓し、成長させていくには、相当の先行投資が必要なので、既存事業の足枷になります。それでも果敢に取り組み、成功させるのは、経営者の決断力、実行力、先見性や、それについていける従業員が必要で、一筋縄ではいきません。だからこそ、変態を成功させた企業に投資家が惹かれるのです。
高まるグミ人気で予想を超え好調の「カンロ」決算で注目した2つの数字とは?
グミ市場が驚きのノビ
先日、飴を買おうと駅構内にあるコンビニに寄ったところ、選択肢が非常に少ない! あまり触手が伸びず、ほかに代替品はないものかと物色すると、グミの品揃えが異常に充実しているのを感じました。専用の吊り棚にずらりと並んだグミの数々。とくにハード系のグミが多いように感じます。前々から、近所のコンビニでもグミ売り場の拡大は気になっていましたが、さらにグミ人気は高まっているようです。コンビニのグミ売り場がどんどん拡張していることからも、グミ市場が大きくなっていることがわかります。調査会社のインテージ調べによると2023年の販売金額ベースでは972億円で、前年から24.1%の伸びとなっています。その一方で、縮小しているのがガム市場です。2021年にグミの販売金額が、ガムをはじめて上回り、その後は差が開く一方。コンビニのガム売り場はどんどん小さくなり、グミとは対照的な扱いです。グミ人気が高まった理由には、コロナで自宅にいることが増えたこともあげられています。仕事や勉強をしながらかみ続けられ、ストレス解消にもつながるとのこと。ガムは、口臭対策で噛む人が多いため、外出機会が減りニーズが落ちたようです。いった
アシックスとミズノが圧倒…スポーツブランド5社の明暗を分けた、投資家が注目したポイントとは?
1年前はスポーツメーカーすべてが好調に見えたが…
ちょうど1年ほど前、この連載でスポーツブランド5社(アシックス、ゴールドウィン、デサント、ヨネックス、ミズノ)の業績が好調で株価も堅調だという記事を書きました。その株価の動向を確認したら、驚くほどに勝ち組と負け組が、はっきり分かれていました。画像:TradingViewより1年前と比べてアシックスとミズノは80%以上、上昇しているにもかかわらず、ほか3社はマイナスという悲惨な状況。同じスポーツブランドでも、何を買うかで投資成績は大きく変わってしまう結果となっています。株価の推移をみると、2023年5月あたりから少しずつ勝ち組、負け組の騰落率が乖離し、その後8月あたりからきっぱり分かれた感じがします。ちょうど決算発表時期ですね。アシックスは12月決算で、ほか4社は3月決算です。となると、5月に発表された24年3月期の新年度予想にヒントがあるかもしれません。
少子化なのに過去最高益を更新、株価も上昇トレンドの早稲田アカデミーの強さとは?
「自動化」がカギ
銘柄物色をする際には、どうしても自分の関心・興味が向かうフィールドのものに目が行きます。個人投資家ですので、それでなんら問題ありませんが、ときどきまったく興味がない分野でも、アンテナに引っかかることがあります。わたしにはふたりの娘がいます。東京生まれの東京育ちですが、受験デビューは二人とも高校生。お受験熱が高い地域においては、マイノリティーに当たります。そんなこともあり、投資対象としても学習塾はほとんどノーチェックでした。市場全体を見ても、少子化が進行する日本で学習塾経営というのは、あまり旨みがないのではないか、という読みもあります。実際、大学受験分野では、少子化に加え、推薦入試などの年内入試が入学者の過半に至るなど、一般入試離れが著しく、いわゆる大学受験対応の予備校はかなり厳しい状況。文部科学省の学校基本調査にあるデータによると、1990年に20万人近くいた予備校生徒数は、今では約3万人に激減しています。ところが意外にも堅調なのは、もう少し下の世代を対象とした学習塾です。コロナ禍を契機に私立国立中学への熱が高まり、23年の首都圏中学受験者数は5万2,000人と過去最多を更新しています
売上高は過去最高の予想、群を抜いた強さを見せる「オリエンタルランド」に死角はないのか
来場者はコロナ前の8割に
手放さなければよかった!と見るたびにため息をつく銘柄があります。10年で10倍以上株価が上昇しており、現在もそのトレンドは堅調な超超優良株・オリエンタルランド(4661)です。コロナショックで大きく株価が下落したとき、これは一時的な下落であると確信を持って拾いました。当時は、4分の1に株式分割する前で、一株12,500円だったことを覚えています。そのまま保有していたら、ざっくり2倍。100万円以上の利益が取れたと皮算用せずにはいられません。
決算翌日に株価は急上昇、赤字企業「マネーフォワード」が好調の要因は?
上場来、時価総額は8倍以上、売上高は10倍以上も…
「家計管理は何でされていますか?」 5年くらい前からセミナーで参加者の方によく聞く質問です。キャッシュレスの浸透度と比例して、家計簿アプリなどデジタルで管理する人の割合が高まりつつあります。わたしは15年ほど前から家計簿をつけていましたが、8年ほど前からデジタル家計簿に移行しました。そのきっかけはマネーフォワードMEに出会ったことです。それまでも簡易型の家計簿アプリは使用したことがありましたが、いまいちピンときませんでした。ところがマネーフォワードME(当時はまだマネーフォワードという名称でした)は、それまでの家計簿アプリではなかった、フロー(月々の収入&支出)とストック(預金、株式、投資信託などの資産状況)の両方が一括管理できる画期的なものでした。最初は無料ユーザーでしたが、すぐにプレミアムサービスユーザーに。プレミアムといっても月額500円というお値打ち価格。登録しているクレジットカードで支払いすれば、自動的に支出は記録されるので、アナログ家計簿のように記入漏れなどありません。わたしの場合は、細かい日々のお金の出入りよりも、資産管理を重視しています。そのためのツールとしてマネーフォ
不正のニュースでそっぽを向かれた中古車業界、優等生銘柄「ネクステージ」の決算はどうだったか
長期にわたって株価は上昇トレンドだったが…
この連載の初回で優等生銘柄として紹介した中古車販売のネクステージ。2023年は中古車業界で衝撃的な不正のニュースが流れ、業界全体が消費者からも投資家からもそっぽを向かれました。当社においても、「厳しい販売件数のノルマを達成するために保険の不正請求を行なっていた」などの報道がなされ、今までの優良企業のイメージが一気に崩れ去りました。実際は、個人的な社員の不適切な行動であり、その都度、該当社員には処罰を与える処置をとっており、企業全体の風土ではなかったことが判明しました。それでも傷ついた信頼を取り戻すのはなかなか大変です。参考記事:好決算なのに売られる理由—数字オンチでもわかる、決算で見るべきポイントとは?
コロナのダメージを引きずるフィットネスジム、そのなかでも「女性だけ」のカーブスが好調なのはなぜ?
女性だけに振り切る戦略勝ちか
年末年始の帰省中、80歳手前の母が、連日「カーブス」に通っていました。カーブスは「女性だけの30分フィットネス」と明確なコンセプトを持つスポーツジムで、わたしの母はもうかれこれ10年近く通っています。さすがにコロナ中はお休みしていましたが、今は再開してふたたび日々の習慣となっているようです。2024年の注目投資テーマとして、フィットネスジムを挙げている市場関係者がいました。リオープン銘柄としては、まず飲食、小売、エンタメなどが先陣を切りましたが、それらのセクターはやや一服し、ここからはフィットネスジムが追い上げてくるとの予想です。たしかに、コロナ中に蓄えた脂肪をそろそろなんとかしたいとジム通いを再開する人は周りでもちらほら。かくいうわたしも、コロナ前に通っていたゴルフスクールを再開したばかり。身体を鍛えたい、運動したいモードの大人は確実に増えていますね。
過去最高売上、最高利益を更新予想のアダストリア、それでも「いま株を買うのは難しい」のはなぜ?
12月の月次売上に注目
株式市場では、2月決算銘柄の第3四半期決算発表が続々と行われております。2月は飲食、ドラッグストア、アパレルなど消費者として売れ行きなどを実感しやすい銘柄が多いため、日々の肌感と業績が一致しているかどうかの確認作業にもなります。年度の終盤である第3四半期決算は、良くても悪くても株価はすでに織り込み済みのことが多く、そこから株価が急騰することはあまりありません。投資家の意識は、その先の新年度の業績がどうなるかに向かっていますので、足元の業績への評価がダイレクトに株価に反映しなくなります。そんな事情もあって、第3四半期決算後に株を買うのは難しいのですが、期初から継続的に業績がよく、今後も持続しそうな期待が持てるのに、決算後に株価が下落した場合は、そこが買いチャンスとなることもあります。
業績絶好調のしまむら、株価上昇率がイマイチなのは「優等生」だから?
コロナ禍でも他社を圧倒する強さ
2月8月期決算銘柄の先発隊が、そろそろ決算発表を行なっています。この部隊には小売銘柄が多いため、個人投資家さんにとっても馴染みが深い銘柄揃いです。2023年は、リオープン、インバウンドの恩恵で、小売銘柄にとっては追い風が強く、業績の大幅改善、それに伴う株価上昇が多く見られました。この連載では、小売の代表としてアパレル銘柄を何度か紹介しましたが、アパレル業界全体が2023年は明るい1年だったのではないでしょうか?取り上げたアダストリア(2685)の株価はこの1年で80%上昇、三陽商会(8011)はほぼ2倍になっています。【参考記事】良品計画とアダストリア…明暗分けたアパレル決算、勝ち・負けの境目はどこにあるのか?バーバリー・ロスで倒産危機…なぜ三陽商会は業績予想を上方修正するまでに復活できたのかそんな中、株価上昇率で、少し見劣りしているのはしまむら(8227)です。2023年の株価上昇率は21%。日経平均株価は27%ですから、市場の平均を下回っています。しかし、業績が悪いわけではありません。今期2024年2月期においては、前期に続いて過去最高売上、最高利益を更新予定ですから、むしろ絶好調
秋まで株価が大躍進のラーメン株、御三家の順位に変動。業績は好調なのに株価が下げ止まらない原因とは?
為替の影響か
ここのところ街に出るとあちらこちらで行列ができています。コロナ前によく見た風景が、ふたたび戻ってきた感じです。とくに目立つのはラーメン屋さん。原宿にある某有名ラーメン屋さんの前には、お昼をだいぶ過ぎたアイドルタイムに軽く30人以上が並んでいました。並んでいるのは、アジア圏からの旅行者が多く、インバウンドの恩恵をしっかり受けているようです。ラーメン系企業については、8月にアップした記事「株価が大躍進したラーメン株、御三家に伸び代はまだあるのか?」で取り上げています。2022年からラーメン銘柄は好調で、2023年の8月時点ではかなり株価も上昇していたのですが、ここからまだ株価が伸びるのか? 8月に公開した記事では「ラーメンが伸びるのは困りますが、株価はまだまだ伸びてほしいですね」とドヤ顔で締め括っています。実際その後はどうなったのでしょう?
コロナから復活のモスバーガー、スポットライトを浴びる「出遅れ銘柄」になれるか
2018年に起こった事故とは
ときどき無性に食べたくなるものがあります。そのひとつがモスバーガーのテリヤキチキンバーガーです。大学進学をきっかけに、東京に出てきてはじめて食べたテリヤキチキンバーガーの美味しさは、今でも覚えています。モスバーガーは、ファーストフードの中でも手作り感が強く、お値段は少しお高め、学生時代はちょっとしたご褒美ごはんの位置付けでした。ほかのハンバーガーチェーンと比べると、挟まれているレタスにボリュームがあり、栄養バランスがよいのも魅力。ただ、株式市場で、モスバーガーを運営するモスフードサービスが話題になることは、ほとんどありません。業界1位の日本マクドナルドHDは決算発表のたび報道されますが、業界2位のモスフードサービスに対する注目度は残念ながら低いと言えます。
コンビニジム「chocoZAP」が話題のRIZAP、株式市場のスター銘柄に戻れるか
株価は2017年の高値から一時は10分の1に
最近、身近な友人の中で、「chocoZAP」に通う人が増えています。「chocoZAP」は、RIZAPグループ(2928)が運営する会員制のトレーニングジムで、”初心者でも通いやすいコンビニジム”がコンセプトです。通常のジムとの違いは、トレーナーや受付がいないこと。無人のジムに、初心者でも使いやすいトレーニングマシーンが設置されており、月額2,980円(税抜)で利用できます。服装は自由なので、仕事の合間にサクっと立ち寄り、そのままの服装で10分程度運動していく人も多いそう。また、セルフエステやセルフ脱毛の美容機器が設置されており、わたしの友人は、むしろジムよりそちらが目当てのようです。
決算発表後の急騰を狙う「決算プレイ」を避けて、低リスク高リターンを狙う”後出し作戦”
決算発表チェックの順番をおさえる
決算がよいだろうと先回りして、発表後の急騰を狙う決算プレイや、決算発表翌日に飛びつく好決算キャッチプレイは、そこそこ経験がある投資家にとっても、なかなか思い通りにならないものです。目論見が外れたときのダメージは、金額的にも精神的にも大きいため、わたし自身はほとんどチャレンジすることはありません。しかし、決算という材料が、その後の株価を押し上げることは多く、上手に捉えれば、資産運用の効率をぐいっと底上げしてくれるので、利用しない手はありません。そこでわたし自身が行っている比較的リスクが少なく、好リターンを取りやすい”決算後出し作戦”を紹介しましょう。
市場縮小が止まらないカメラ業界…なのに高値更新を続けるレンズメーカーがある?
偏見を捨てることで出会える銘柄
東京オリンピックからずっとウォッチし続けているマイフェイバリッツ銘柄があります。スマホカメラの発達で、市場のシュリンクに泣くカメラ業界で、むしろ逆に業績の成長が止まらない交換レンズメーカー・タムロン(7740)です。カメラといえば、キヤノン、ソニー、ニコンが王道なので、タムロンを知っている方は、プロもしくはハイレベルのアマチュアさんに限定されるかもしれません。わたしもカメラ自体にはそこまで興味がなく、スマホカメラで十分ですが、知り合いのカメラマンさんは、タムロンのレンズを絶賛しておりました。そもそもわたしが当社に目をつけたのは、東京オリンピックのカメラマン席でソニーのカメラがやたらと目立ったからです。オリンピック競技の写真は、瞬間を捕らえる必要があるため、フォーカスの精度が高いこと、連写の性能がよいこと、またシャッター音がしないことなども重要だと思われます。かつてオリンピックのカメラ席では、キヤノンとニコンの2大メーカーが鎮座しておりましたが、ソニーのカメラが急増したことを不思議に思い調べたところ、タムロン製のレンズが使われていることを知ったのです。
時価総額1兆円オーバー、資生堂がまさかのストップ安! 株価を下げた理由を探る
中国事業だけが不振の原因ではない…?
時価総額が小さく、流動性が低い銘柄だと、決算などなにか悪材料が出たときはストップ安になることもよくあります。ところが時価総額が1兆円オーバーの大型銘柄でストップ安になるなんて…。11月11日に2024年12月期の第3四半期決算を発表した翌日、資生堂(4911)株はストップ安をつけました。決算発表前も株価は軟調で、年初来安値を更新していたので、ある程度の悪材料は織り込んでいるかと思われていた中でのストップ安はなかなかショッキングであります。そこまで株価を下げた理由を探ってみましょう。
過熱する即食市場「ニチレイ」は絶好調、「カニカマ」で紀文食品は黒字に
健康需要で「練り物」人気も
先日、何気なくコンビニの冷凍食品売り場を見て、その充実ぶりに驚きました。かつて冷凍食品といえば、ミックス野菜、フライドポテト、ハンバーク、コロッケ程度だったと思いますが、今時の冷凍食品は、ペスカトーレ、ボロネーゼ、ビビンバ、まぜそば、若鶏のグリル…と、お弁当の一品というよりも、しっかりメインのおかずとなりそうなものが増えています。昨今、忙しい共働き世帯や、家での調理が億劫になりがちな高齢世帯、単身世帯の増加により、簡単で即食べられる冷凍食品がかつてないほどに脚光を浴びているようです。たしかに、コンビニやスーパーの冷凍食品売り場は以前より拡大していますし、冷蔵庫のほかに、冷食専用の冷凍庫を購入する人も増えています。冷凍食品の味や品質が劇的に向上したのも冷食人気を過熱させています。2022年の8月に松屋が銀座店の地下2階に冷凍食品売り場「ギンザフローズングルメ」を開設したのは、冷食がグルメ食品であると認識させられる出来事でした。さらに販売経路の変化も冷食の拡大を後押ししています。街角で冷凍食品の自動販売機を見かけませんか? わたしがよく行く餃子屋さんの店頭にも餃子の自動販売機が置いてあり、