はじめに
「エリア選定」と「開業する場所」が最大のポイント
──直接的な表現で恐縮ですが、ぶっちゃけ小規模宿って儲かるんでしょうか?
そこが、やはり皆さんが最も気になる点でしょうし、私が開催している小規模宿セミナーでもよく聞かれる質問です。その質問に対して、私は「利回り100%の物件もあるのが宿泊事業、小規模宿事業です」と答えています。もちろん、開業するエリアや物件、運営の仕方などによって収益性は大きく変わりますが、実際に利回りが50%を超えるような高収益物件も珍しくありません。
ここでいう利回りとは、年間の売り上げを土地や物件の購入にかかった費用で割った「表面利回り」のこと。利回りにはこの表面利回りと、年間の売り上げから経費を引いた金額を、購入金額と購入時の諸経費で割った「実質利回り」がありますが、この「実質利回り」でも、30%を超える物件が少なくありません。実際、私が手掛けている物件も、実質利回りが30%を超えている物件ばかりです。
──不動産投資では、利回り10%超えでも高利回りと感じますが、30%オーバーはすごいですね。「実質利回り30%超え」ということは、初期費用をほぼ3年で回収できているということですか?
はい、その通りです。私が山梨県で立ち上げた宿の表面利回りは76%、実質利回りは37%です。政府や地方自治体の補助金を活用すれば、宿の利回りはさらに上がります。もちろん、補助金をもらうには事業計画書の作成や申請の手続きなど、時間や手間がかかりますが、初期費用を極力抑えようとするなら、補助金を活用するのも一手です。
宿泊業は「地方創生」政策や人口減少問題の対策として、政府が強力に後押ししている産業です。観光業は、世界的に高成長が期待されている産業。そして、宿泊事業はその観光産業の成否のカギを握る産業と言っても過言ではありません。小規模宿事業には、「世界的な成長」と「政府によるバックアップ」という、大きな追い風が吹いているんです。
──小規模宿事業が成功するためのポイントは何ですか?
その宿が成功できるかどうかのポイントは、簡単に言うと「場所」です。要は、どのエリアのどんな場所に宿を開くことができるかですね。宿の売り上げは、「場所」と「コンセプト」、「収容人数」という3つの要素で決まってくるのですが、その中で最も重要なのが「場所」なんです。極端な話、宿を開く場所さえ見誤らなければ、多少、宿のコンセプトが需要からズレていても、顧客は集まります。逆に、場所を間違えてしまうと、どんなに優れたコンセプトを持った宿でも、集客に苦労することになるでしょう。
最重要ポイントであるにも関わらず、小規模宿セミナーの受講者に「なぜその場所に宿を開こうと考えているのか」と質問すると、「自宅から近いから」「なんとなく気に入っている場所だから」という漠然とした答えが返ってきたり、理由を明確に答えられなかったりする人が割といるんですよ。ここ数年、観光地を中心に宿泊施設は全国的に増えていて、要はライバルが多い産業になりつつあるので、「自宅が近い」「好きな場所」といった安易な考えで開業しても、集客に苦労する可能性が高いでしょう。
──開業するエリアや場所を見誤らないようにするには、どうすればいいのですか?
徹底した「エリア分析」ですね。「エリア分析」とは、そのエリアでどれだけ集客が見込めるかをあらかじめ調べることです。具体的には、そのエリアの小規模宿情報を検索できる「Airbnb(エアビーアンドビー)」で競合の数を調べたり、「AirDNA(エアディーエヌエー)」という小規模宿の調査・分析サイトで、そのエリアで開業している宿の売り上げや稼働率、単価などをチェックしたりします。
その調査で「このエリアには割とライバルが多いな」となったら、宿のコンセプトを工夫して、競合の宿との差別化を図る必要があります。「AirDNA」には無料版と有料版がありますが、無料版だと簡単な情報しか調べられません。「どの場所に宿を開業するか」は、その宿の成否を大きく左右するポイントなので、先行投資だと思って有料版にするべきだと思っています。無料で使えるツールに、同じく小規模宿のデータ分析サイト「AirROI(エアアールオーアイ)」もあります。
後編はこちら:「小規模宿」は1年間でどのくらいの利益を生み出す? 事業成功のカギとは
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