はじめに
霧が晴れるのは今まで考え続けた結果
中井さんと佐々木さんの掛け合いには、さまざまな名言が散りばめられている
――作品の中で「20秒で見抜くために20年かけてきた」という中井貴一さん演じる古物商のセリフがあります。自分の目を養うために必要なことは何だと思いますか。
この言葉はとても大事で、まさに僕たちのやっていることです。とにかく毎日のように言ってますが、積み重ねだと思います。初めて会ったときに中井さんも言ってました。「俳優という仕事は死ぬまで修行です。到達点がないんだ」と。
まず、目指すべきものと出会うこと。そこにたどり着くために何をすればいいのか。「これをやったから、こうなれる」という簡単なマニュアルはないので、ただ本当にひたすら修行を積み重ねていくしかありません。
ところが、あるとき、ふと霧が晴れたように何かが見えて、5秒くらい「これだ!」と思いつく瞬間があるんです。でも、それは5秒で思いついたことじゃなくて、今まで考え続けてきた結果なんですよね。それまでには、ひょっとすると50年かかるのかもしれない。
僕は、この仕事を始めた頃はシナリオの読み方もわからなかったです。この年になってようやく、作り手の狙いがわかるようになってきました。センスのない人はいくらやっても面白くない。センスがある人間に追いつくためには、努力が必要です。
自分が楽しむためにどうしたらいいのかを追求していくと、だんだんそれが楽しめるようになり、面白いと思えるようになってきます。今の自分を実感することが大事だと思います。中井貴一さんも佐々木蔵之介さんも、ご苦労されてゼロからやってこられた人達ですから、セリフにも共感していただけたのだと思います。
――最後に、これから映画をご覧になる方に一言。
楽しんでいただければ、うれしいです。時々、難しい話も出てくるので、気になったら調べてみてください。どれが嘘でどれが本当か、いくらウィキペディアで調べても出てこないと思います。僕も全部はわからないです(笑)。
シナリオライターをはじめ、いろいろな人が調べたトリビアが入り乱れています。作品の中で、何を面白がれるか、それぞれの視点で楽しんでもらえたらと思います。
(文:編集部 土屋舞)