はじめに
前回の記事でも少しだけ触れましたが、年々、男女ともに大学進学率が高まってきています。
文部科学省の統計で今から半世紀近く前の1970年を見てみると、4年制大学への進学率は男性27.3%、女性6.5%でした。およそ男性の5人に1人、女性の15人に1人が進学している計算です。決して高い進学率ではありません。
それが2017年では、男性55.9%、女性49.1%(ともに2人に1人)まで上昇しています。男性の進学率は約2倍、女性に至っては約8倍にも増加しています。
データだけで見るならば、大学中退者がその中にいるとしても、もはや4年制大卒の男女は決して珍しくはありません。ところが、このあまりにも急な進学率の上昇が、結婚に関する親子の話し合いを特に学歴に関して難しくしているようです。
パートナー候補に対する「学歴親ブロック」
昨年、ある30代の未婚女性から「親からは、せっかく女子大まで出たのだから、結婚相手は高卒なんてもったいない、と言われているんです」というお話を耳にしました。
また、別の40代女性からは、20代からの恋人と最近やっと結婚できた、という報告がありました。女性側の親の反対で、専門学校卒の彼と院卒の彼女は長い間結婚が許されませんでした。彼女が40代に入り、ようやく彼女の親が諦める形での結婚です。
もちろん、日本の憲法からいえば「結婚は両性の合意によってのみ成立する」ので、親の反対では愛する2人の結婚を妨害することはできません。とはいっても、長年育ててくれた親への配慮や各家庭における親子の力関係など、結婚を決断する際の「親ブロック」はなかなか手ごわい存在のようです。
祖父母世代で大卒女性は珍しい存在
私は仕事で地方における結婚支援のアドバイザー業務もしていますが、高齢の結婚事業支援者の方に「大卒の女性に、高卒の男性をご紹介できますか」と尋ねると、「いや、それは絶対にないですね……」との回答でした。
これらの話、今の20代の方ならば「とんでもない話だ」と感じるかもしれません。しかし、先ほどのデータが示すように、半世紀前では大卒の男女、特に大卒の女性は15人に1人という非常に珍しい存在でした。
学歴的にみて稀有な存在ゆえに、彼女より学歴の低い男性を紹介するなど失礼ではないか、うまくいかないのではないか、といった考えが当時の社会にはあったのです。
とはいえ、所詮は1970年当時の進学の話、そんな昔の感覚の人はいるの?という議論があるかと思います。確かに1970年というと、日本における人口マジョリティの団塊ジュニア(1971~1973年生まれ)が生まれた頃の感覚になります。40代半ばの「団塊ジュニア」にとっての両親、今の若者のおじいちゃん・おばあちゃん世代の感覚といえるでしょう。
親世代の常識は今の非常識
ということは、「学齢が女性より低い男性を紹介できない」という感覚は、「若い人にとってもはや風化した感覚」といえるのでしょうか。今の若者たちの親世代にあたる40代半ばの団塊ジュニアが大学に進学した、1990年頃の4年制大学の進学率を見てみましょう。
1990年の男性進学率は33.4%、女性進学率は15.2%です。男性の3人に1人、女性の7人に1人程度、ということになります。つまり今の40代半ばの人にとってさえ、進学当時「大卒女性はまだまだ珍しい少数派の人々」だったのです。
最初に挙げた30代女性の例ではないですが、いまだに若い女性が「パートナー男性の学歴に対する親ブロック」にぶつかる理由はここにあります。親世代の過去の状況から考えると、「釣り合わないだろう」と思ってしまうのです。
しかし、上で示したように、今は大卒以下と以上で男女とも同じ半々、という世の中なのです。「親世代の常識は、今は非常識である」ことがデータからは示されています。