はじめに

JR山手線の渋谷駅と原宿駅のちょうど中間。明治通りとファイヤー通りが交差する場所に4月27日、新しい商業ビルがオープンしました。

その名は「GEMS神宮前」。地上10階から地下1階までの11フロア構成で、地上2階から地下1階が物販、それ以外の8フロアは飲食店が入居しています。

飲食店は1フロアに1店舗が入る形式を取っており、8店舗中、6店舗が新業態だといいます。いったいどんな店舗が入っているのでしょうか。GEMS神宮前の戦略を掘り下げてみます。


焼肉からインド料理まで6つの新業態

GEMS神宮前に出店した6つの新業態。最上階に入っているのが、天然溶岩プレートを使用する新しい焼肉スタイルの店「ブッチャーズキャンプ」です。


溶岩プレート(中央奥)で肉がふっくら焼き上がるのが特徴

こちらの店舗は、五反田や大井町で「銭場精肉店」などを展開するZENIBAの新業態になります。直火ではなく、溶岩プレートで低温で焼くことで、水分を逃さず、肉のうまみを閉じ込めたまま味わえるのが特徴だといいます。

また、肉は和牛のメス牛にこだわり、一頭買いしているとのこと。脂の溶け方が一般的な牛肉とは大きく異なるのだそうです。

5階に入っている南インド料理の店「エリックサウスマサラダイナー」も新業態。英ロンドンを中心に、世界的に盛り上がりつつあるというモダンインディアンを味わえる点が売りです。


フレンチのような盛り付けが印象的なモダンインディアンのコース

店の担当者によると、モダンインディアンを楽しめるのは、この店がおそらく日本で初めてとのこと。インド料理といえばカレーをイメージしがちですが、この店舗ではフレンチさながらのコース料理を提供しています。

他シリーズよりも手頃な価格帯

GEMSは野村不動産が展開している商業ビルのブランドです。2012年に渋谷駅の新南口前に1棟目を開業。以来、市ヶ谷、大門、神田、恵比寿、茅場町で展開してきました。今回の神宮前で7棟目になります。

ネーミングは、英語で「宝石」を意味する「GEM」の複数形。敷地面積300平方メートル前後の比較的狭い土地に建っており、基本的に飲食店中心の構成になっています。

GEMS神宮前のメインターゲットは、キャットストリートなどの裏原宿や神宮前を日常的に訪れる買い物客や、周辺の店舗で働くアパレルショップの従業員です。これまでのGEMSシリーズではディナーの客単価が6,000円前後の店舗が多かったのですが、神宮前では3,000円前後から最高でも7,000円と、比較的リーズナブルな価格設定にしています。

24時まで営業している店舗もあるので、アパレルショップの閉店後などに飲食してもらうことも想定しているそうです。野村不動産・都市開発事業本部の長谷部尚子コミュニケーションマネージャーは「まずは餃子とビールを飲んで、締めにうどんを食べるなど、お店をハシゴする楽しみ方もできます」とアピールします。

GEMS神宮前は、渋谷駅を挟んでGEMS渋谷に近接しています。商圏の重複が懸念されるところですが、実はGEMSブランドの認知が進み、神宮前周辺のオフィスワーカーもGEMS渋谷の店舗に予約を入れていることがわかったそうです。

また、GEMS神宮前の周辺はアパレル店舗や買い物客が多いにもかかわらず、意外と飲食店が少ないエリアでもありました。こうした事情から、今回の場所にGEMSとして7棟目の開発を決めたといいます。

GEMS初の物販混合スタイル

今回の神宮前には、客単価以外にも、これまでのGEMSシリーズと大きく異なる点があります。それは、地下1階から地上2階にアパレルの物販店を入れたことです。

内覧会当日は見学できませんでしたが、この3フロアにはスポーツアパレル「チャンピオン」の国内最大規模のブランドストアが入居しています。場所柄、1階の賃料が飲食店の払える水準ではなかったという事情もあるようですが、1階に物販を入れることで、シャワー効果と噴水効果の両方が見込めると判断した、というのが大きな理由です。

これまでは飲食を主体にテナント構成を考えてきたGEMS。ただ、物件数が増えてきたことに伴い、従来の枠組みとは異なるアプローチを模索する段階に差し掛かっているといいます。

今年12月に開業する大阪・難波のGEMSなんばも、1階部分に物販のテナントが入る予定です。今後のGEMSブランドをどう展開していくか。野村不動産にとっても、物販混合の1号店である神宮前がGEMSの名前の通り、どれだけキラめいてくれるかが、気になるところでしょう。

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