はじめに
「3組に1組が離婚しています」という離婚情報は比較的拡散しつつあるものの、では一体、離婚した方の再婚マーケットはどうなっているのか、といった情報はあまり目にしたことがないかもしれません。
「ちょっと待って。すでに結婚歴のある人の応援よりも、結婚したくてもまだ1度もしたことがない人の応援を先にしてほしい」。読者の皆さんはそう思うでしょうか。
しかし、1度も結婚したことがない人にとって、「結婚歴がある人」が運命の相手となる可能性も実際にはあります。「初婚者と再婚者との結婚」があるからです。
「『結婚難民』の羅針盤」というこの連載は、結婚を希望している方のための明日を変えるかもしれない学びの場です。ですので、結婚後の離婚動向よりもまず、結婚マーケットそのものを詳しく知ることのほうが、より明日への第一歩につながる情報となる可能性があるように思います。
結婚後の離婚マーケットことをどんなに先読みしてみても、目の前の結婚マーケットのことを考えるよりも「取らぬタヌキの皮算用」になる可能性が高いからです。そこで今回は、結婚マーケットにおいて再婚の状況がどうなっているのか、特に「再婚者と初婚者との結婚の状況」について、見てみたいと思います。
年々拡大する「再婚者がお相手」市場
私の母の世代(団塊世代、今の70歳前後)では「離婚なんて恥だ」という考えがありました。離婚したくても「家のために」「子どものために」「社会的体裁で」離婚しなかった夫婦が少なからず存在します。
団塊世代元年は1947年ですので、2018年現在、71歳くらいの年齢の人です。この団塊世代が成人した1967年の結婚マーケットにおける再婚者の割合を見てみると、その年に役所に届け出られた婚姻届のうち、再婚夫が含まれる割合は8.5%、再婚妻が含まれる割合は5.9%でした。
いずれも10組に1組にも満たない再婚夫・再婚妻割合です。確かに「再婚者が結婚相手」となる割合は少なかったといえます。しかし、2016年までの再婚割合の推移を見てみると、結婚相手に占める再婚夫・再婚妻の割合動向に大きな変化が見られることがわかります。
上図を見ると、2016年に結婚したカップルに占める再婚夫の割合は19.5%、再婚妻の割合は16.8%です。団塊世代が成人した1967年との比較で考えると、再婚夫の割合は2.3倍、再婚妻の割合は2.9倍にまで増加してきています。
わかりやすくイメージすると、2016年に結婚したカップルの5組に1組の夫が再婚者なのです。そして、6組に1組の妻が再婚者であることが示されています。もはや「結婚相手が再婚者である」ということは珍しいとはいえない状況です。
今や再婚者が含まれる成婚は4組に1組
上のデータでは、再婚者がいる結婚の詳細がわかりません。ですので、再び国の統計で確認してみたいと思います。
初婚・再婚の組み合わせの内訳をみてみると、初婚同士のカップルは全カップルの74.5%で4組に3組です。一方、夫婦どちらか(もしくは両方)に再婚者が含まれる結婚は実に4組に1組です。
初婚の男性が再婚の女性と結婚した割合は6.9%ですので、14組に1組程度です。また、初婚の女性が再婚の男性と結婚した割合は9.7%ですので、10組に1組程度です。ここに再婚者同士の結婚が9.0%で、11組に1組で加わります。
いずれにしても、再婚者は先に検証した通り、5組に1組の夫、6組に1組の妻を占めています。お相手候補として見逃すべき割合ではない程度に増加してきている、といえます。
「バツありはダメ」というバイアス
そもそもバツ1、バツ2、といった際の「バツ」の語源は何でしょうか。「離婚ってダメなこと、結婚継続の失敗だから、ダメ・失敗って言う意味のバツでしょ?」――これは大きな誤解です。
バツ1、バツ2など離婚歴を示すバツは、まだ電子化していなかった時代の戸籍制度の名残の言葉です。当時は離婚した時に戸籍から抜けたことを示すために、消去の意味で戸籍台帳の名前の上にバツを書き入れ消したところからきています。
電子化した今では、離婚してもこのバツは戸籍上に登場しません。それをいつまでも慣習的に昔の紙の戸籍台帳ベースの表現で、バツバツ言っているだけのことなのです。ちょっと時代遅れの残念な言葉、ともいえます。
「言葉の魔法」呪縛からの脱却
私が結婚支援分析調査をしているあるエリアで、こんなことがありました。
その男性は東証1部上場企業に勤務する、見た目もさわやか、人柄も大変温厚な明るい素敵な30代男性でした。しかし、昔の彼が「いま私が知っている彼」そのままかどうかは不明です。
彼には離婚歴があります。喧嘩両成敗ではありませんが、彼にも若い頃には、何か女性と歩みをともにすることに関して問題があったのかもしれません。
彼は転勤に伴い、過去を乗り越え、新天地でともに生きてゆく女性を探すことにしました。登録したデータ・マッチングシステムで検索する際に、彼は1つだけ「ちょっと多数派男性とは異なる」お相手の検索条件をつけました。
「お相手の結婚歴:こだわる・こだわらない」という項目に「こだわらない」というフラグを立てている女性、という検索条件です。検索結果画面に並んだ女性からピンと来る写真の女性たちに、彼はお見合いを申し込みました。その1人が、今の彼の妻となった女性です。
実は並んだ写真の中で彼が一番、素敵だと思った女性でした。婚歴ありの女性よりも、一般的にみて離婚に対して理解がなさそうと思える初婚の女性でした。2人の幸せそうな結婚式の写真は、結婚支援サイトの看板になりそうな素敵なものです。
もし初婚の彼女が「結婚歴がある男性」=「バツ男性」と考えて、「お相手の結婚歴:こだわる」とのフラグを立てていたとしたら、2人の幸せな出会いは決してありませんでした。IT化する前の時代の古い「言葉の魔法」にとらわれるあまり、運命の出会いを逃している方が男性、女性とも、実は少なくないのではないか、そんなことを思わされた出来事です。
その人の「過去」や「ある条件」にばかりこだわるのではなく、何よりまず「今自分の目の前にいるその人」との相性をしっかり見るクセをつけることも、「ちっともいい人がいないんだけど」と嘆く結婚難民にとって、必要なことかもしれません。