はじめに
オートファジーをいち早く商品化したポーラ
東工大の大隅栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞した日、関連するバイオ企業の株が上がる中で、もうひとつ注目された会社があった。化粧品のポーラ・オルビスホールディングスである。
注目された理由は、ポーラのある高級化粧品。商品ラインの中でも最も高いブランドである美容液「B.AグランラグゼⅡ」という50gで税込77,760円もする商品が、大隅教授のオートファジー理論にもとづいていることで話題になったのだ。
オートファジーとは、細胞内のタンパク質の再利用現象のことで、要は細胞の中の老廃物であるタンパク質を自ら新しいタンパク質の部品としてリサイクルすることで細胞が生まれ変わるという現象だ。
この「B.AグランラグゼⅡ」はオートファジー理論を活用した商品として、肌の老廃物を再利用して新しい肌ができ上がる「オートファジーサイクル®」を期待した女性たちにエイジングケア商品としてこれまでも人気だった。高価格にもかかわらず年間5万本ほどのペースで売れてきたという。
円高で逆風のインバウンドでもコーセーは業績を伸ばす
今年7月、ポーラ・オルビスホールディングス傘下のポーラ化成が肌のシワの原因物質の働きを抑える成分を発見し、2017年に商品化するというニュースが話題になったばかりだった。今回のノーベル賞受賞はまたいいニュースが飛び込んできた形だ。
ポーラ・オルビスホールディングスは今期も増益で過去最高益を見込むと発表していた。今回の受賞で「オートファジー」という言葉が一般に浸透し、ここからさらに売上増加を期待できる。そんなことから注目を浴びたわけだ。
さて、ポーラ以外でも化粧品会社各社は高価格帯商品での業績がとてもいい。その結果、大手でない化粧品会社でも強い商品を持っていることで好業績を達成している。その意味でコーセー化粧品も当面の好業績が見込めそうだ。
特にコーセーが楽しみなのは、ブランド化粧品「雪肌精」が中国人に人気が高い。銀座に中国人観光客のバスがやってくると、とにかく「雪肌精」が売れるのである。
ポーラもコーセーも一貫した増益基調にのってきた
ここ半年ほどに起きた円高で以前ほど日本への旅行がお得ではなくなったこともあり、爆買い商品の中で数万円から数十万円の高額商品はぴたりと売上が止まってしまったそうだ。ところが「雪肌精」のような価格帯の商品は今でも絶好調である。
実際、銀座の小売店では百貨店やラオックスの免税品売り場はやや閑散した雰囲気が目立ち始めているが、マツモトキヨシの店舗はいつも混雑している。観光庁の調査でも4~6月の化粧品のインバウンド消費単価は前年同期比で7%増と円安の昨年よりも伸びているのだ。
コーセー化粧品はさらなる円高を警戒しているようだが、それでもこのインバウンド消費動向が今のペースで続けば大きな増益を見込めそうだ。実際、4~9月期は上期業績としては過去最高益。高価格帯のブランド「コスメデコルテ」「ジルスチュアート」が好調ということだ。
コーセーの今期連結の純利益予想額が209億円、ポーラは同じく172億円でどちらも2012年以降、毎年の増益基調にある。小粒だがいい商品を持っている化粧品会社から目が離せなくなりそうだ。