はじめに
2015年に実施された国の大規模調査(国立社会保障・人口問題研究所:出生動向基本調査)によると、結婚したい未婚男女のうち「もし1年以内に結婚するとしたら、何が一番障害になるか」という質問に、男女とも約4割が「結婚資金」と回答しています。
あくまでも1年以内に結婚する場合の一番の障害であり、「結婚のための住居」は別の回答選択肢としてあるため、「結婚資金」には住居資金は含まれていないといえます。ちなみに、男女とも約2割は「結婚のための住居」と回答しています。
住居を含まない1年以内の結婚のための障害となる「結婚資金」というと、やはり結婚式や新婚旅行の費用でしょうか。この回答結果からそう考える人も少なくないと思います。
そこで、そもそも結婚したい未婚男女の4割もが「すぐに結婚するとしたら一番の障害だ」と思っている「結婚資金」について、リアル・データで検証してみたいと思います。一体、2人の門出のセレモニー金額はいくらなのでしょうか。
平均費用は10年で16%上昇
下のグラフは、2000年から2014年までの結婚式場で挙げられた平均挙式費用の推移を示したものです。結婚式場業界全体の売上高を取り扱い件数で割って算出しています。
最新金額である2014年の10年前、2004年の平均金額は260万円です。5年前の2009年では293万円、そして2014年は302万円。10年間で16%も上昇しています。
ここ5年くらいの推移からは、約300万円が2人の門出のセレモニー相場であるようだということ、そして、結婚式にお金を掛ける人が増えてきたのではないか、というデータに見えます。
しかし、データから「そうか、やはり結婚式費用として300万円が必要なのだ!」と考えるのは、実は早とちりといえます。それは、どうしてでしょうか。
そもそも結婚式場を利用しているのか
上の計算は、あくまでも「結婚式場で結婚式を行ったカップル」の平均相場です。そこで、一体どれくらいのカップルが結婚式場で挙式しているのかについて、推移を見てみたいと思います。
下の図からは、2004年からの10年間で7.3万件から4.8万件へ、結婚式場で行われた挙式が件数ベースで66%に減少していることがわかります。全体数として、結婚式場で挙式を行うカップルが大きく減ってきているのです。
しかし、結婚するカップルが減っているのだから、それは当たり前ではないか、やはり300万円が必要なのではないか、という疑問がまだ残ると思います。
統計的に考えると、結婚するカップル全体に占める「結婚式場で挙式したカップル」の割合が減っていて初めて、平均300万円がかかるというけれど、そもそも式場を利用していないカップルが増えているから、リアルにはそこまでかかるとはいえないのではないか、といえます。
結婚式場での挙式率は1割以下
下のグラフは、全婚姻数とそのうち結婚式場で行われた婚姻数の推移、そして、全婚姻に占める結婚式場での婚姻件数の割合(式場挙式率)の推移をグラフ化したものです。
この図表を見て、驚く人も少なくないかもしれません。実はこの14年の推移で見る限り、そもそも結婚式場での結婚は1割程度であり、さらに毎年、その割合が減少しているのです。
結婚式場挙式で平均300万程度かけているのは、データからは「非常に限られた1割未満のカップル」に属するグループの男女、ということが指摘できます。
長期目線に立った門出のセレモニーへ
未婚者が思う「すぐに結婚するとしたら、一番の障害は結婚資金」という考え――。結婚の門出のセレモニーとして結婚式場挙式が行われるケースが1割を切る中で、この考え方はいささか極端な考え方かもしれないことが、前出のデータからはうかがえます。
結婚式場などを運営するアニヴェルセルが2016年に実施したインターネット調査(23~39歳男女1,200人)でも、20代の40.9%、30代の26.0%が結婚にあたって挙式・披露宴・記念撮影など「何もしていない」(ナシ婚)と回答しています。また、若い世代ほど顕著にナシ婚を選択する傾向が見られています。
「熟年離婚」「昼顔妻」「仮面夫婦」「離婚率上昇」……。こんな結婚ネガティブワードがネットを賑わす中、反面教師ではありませんが、結婚に踏み切った若い人たちは、2人の門出のカタチにこだわるあまり「まだお金が足りないから」と踏みとどまるよりもっと大切なことがあることに、気づき始めたのかもしれません。
結婚式はスタートではあっても、決してゴールではありません。「2人の幸せの形」は、その開始時点から完成形としてそこにあるものではなく、時間をかけ2人で中長期的に築き上げてゆくもの、ということへの若い世代の気づきの表れのデータにも見えなくありません。
2人で覚悟して紡いでゆく時間の先にある、2人だけのオリジナルの幸せ。それは、きっとどんなに華々しくお金をかけた2人の今のセレモニーよりも、はるかに堅固な2人の幸せのカタチとなるのではないでしょうか。