はじめに

導入に至るまでのハードルは?

電子マネーでも現金でも、払う金額が同じなら利用者側にはほとんどデメリットはありません。しかし、電子マネーを発行する側や導入する店舗側にとっては、ここまで単純ではありません。

まず、電子マネーを発行する会社が必要になります。電子マネーの発行体はプリペイドカードなどを対象にした「資金決済に関する法律」の規制を受けますので、財務局の監督下に置かれます。

発行体になるには、最寄りの財務局に届け出をしたうえで、毎年3月、9月末時点で発行済みのうち未使用残高が1,000万円を超える場合は、残高の半分以上の発行保証金を供託しておくなどの義務を負います。

親会社のDeNAは、課金ゲームの事業を手掛けている関係で、プリペイドカードのノウハウを持っています。したがって、電子マネーの発行会社としてのノウハウは、親会社のものを生かせます。

ギフティはあくまで技術提供をする立場ですので、自らが発行体になることは想定していません。また、財務局の監督を受け、残高管理や供託などの必要があることからすると、球団自身が発行体になるのではなく、別法人を立ち上げるほうが合理的でしょう。

その別法人をギフティと球団の共同出資にするのか、球団もしくは親会社であるDeNAの出資にするのかなど、詳細はこれから詰めていくことになると考えられます。

加盟店の理解を得られるか

最大の関門は加盟店です。現金払いで不自由していないユーザーを電子マネーに誘導するには、ポイントが貯まる、一定条件を満たすと割引が受けられるなど、プラスアルファの特典も必要ですが、第一に求められるのは魅力的なお店で使えることです。

ギフティの技術は加盟店の初期投資負担が小さいことが強みで、導入時に必要な投資は1個数千円の専用スタンプを買うだけで済みます。

ただ、電子マネーで決済した分が発行会社からお店に入金されてくるまでには、当然、タイムラグが生じます。この点はクレジットカードと同じです。

さらに、お店が発行会社に支払う決済手数料の料率をどうするのかも重要なポイントです。料率がクレジットカードよりも高いと、お店の側のインセンティブは著しく落ちます。小規模なお店では、料率が高い決済手段は採算面で受け入れられませんし、現金化までのサイトが長いと、資金繰りの面で命取りになりかねません。

実証実験は今シーズン中にもスタート

現在でも、ベイスターズは「クラブベイスターズ」という制度を持っています。加盟している飲食店や小売店に行って、「ベイスターズを応援している」と言えば、特典が受けられるというもので、加盟店は現在700店ほどになっています。


ベイスターズコインはJR関内駅周辺でも使えることを想定

加盟店獲得の営業対象は、クラブベイスターズ加盟店からスタートすることになるので、まったくゼロからの開拓になるわけではありません。それでも、現金化までのサイトと手数料率で一定程度の優位性を備えることが、魅力的なお店に加入してもらえるポイントになることは間違いありません。

ベイスターズは「(ベイスターズコインの)実証実験を今シーズン中には始めたい」意向です。ここ数年、人気球団に変貌していますので、ゲームのチケットを取るのは大変ですが、ベイスターズコインは球場に行かなくても使えることを前提にしています。

同様の動きが他球団でも広がっていけば、野球観戦時の利便性はますます高まっていきそう。今回のベイスターズの挑戦は、その意味において、球界や日本のスポーツビジネスのあり方に少なからぬ影響を与えるかもしれません。

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