はじめに

連日の猛暑によって、熱中症による救急搬送が増えています。

消防庁の統計によると、6月以降およそ1万8000人が搬送されました。7/9~7/15の1週間を見ると、およそ9900人が搬送され、そのうち12人が亡くなっています。

かつては、日射病対策として主に屋外に出るときの注意を呼び掛けることが多かったのですが、屋内であっても体温調整機能が働かず、体内に熱が溜まることによってさまざまな症状がおきることから、最近では「日射病」より広い意味をもつ「熱中症」への対策を呼び掛けています。


熱中症による死亡者数は増加傾向

熱中症による死亡者数は増加傾向にあります。その主な原因は、熱帯夜や猛暑日の増加と高齢化だと言われています。

熱中症による死亡者数(資料)厚生労働省「人口動態統計」各年

環境省の「熱中症環境保健マニュアル2018」によると、近年、真夏日(日最高気温が30度以上)、猛暑日(日最高気温が35度以上)の日数が増加傾向にあります。

この3連休は、全国927の集計地点のうち、7/15に200地点、7/16に186地点、7/17に149地点で35度以上を観測しています。7月上旬に200地点以上で35度を観測するのは、この5年間ではじめてのことです。

高齢者は、日最高気温が35度を超えると熱中症発生率が急上昇することが確認されており、特に注意が必要です。厚生労働省の「人口動態統計」によると、熱中症による死亡者の中で、65歳以上の高齢者の割合は、2000年は5割程度でしたが、2016年には8割と増加しています。

(資料)「救急搬送データから見る熱中症患者の増加」『環境儀』国立環境研究所、NO.32、2009年 を参考に編集部作成

また、肥満病、心臓血管系疾患、呼吸器系疾患、糖尿などの慢性疾患の多くは熱ストレスの影響を受けやすいとされ、死亡リスクを高めると考えられています。

4割近くが「住居」で発生

2017年に熱中症で救急搬送された人の発生場所をみると、住居が全体の37.0%と最も多く、次いで、公衆(屋外)が13.9%、道路が13.5%、仕事場(道路、工事現場、工場など)が10.7%でした。つまり、エアコンを入れたり、水分を補給する等といった一般的な熱中症予防が可能な場所でも熱中症は起きうるということです。

発生場所には、年齢による特徴があります。7~18歳では学校での運動中、19~64歳では屋外での作業中を中心に、比較的多様な場所で発生しているのに対して、65歳以上では半数以上が自宅で発生しています。

「救急搬送データから見る熱中症患者の増加」『環境儀』国立環境研究所、NO.32、2009年 を参考に編集部作成

このように、高齢者が自宅で日常生活を送っている中で、熱中症となってしまうのは、高齢者では暑さを感じにくくなっていることから、エアコンを入れなかったり、十分な水分を摂らない傾向があるからだと言われています。また、足腰が弱く、トイレに行きたくないために水分を控えたり、一人暮らしであることから、症状に気づくのが遅れるなど、特有の要因が考えられています。また、体力がないことから、重症化しやすいと言われています。

65歳未満も無関係な話ではない

これまで紹介してきたとおり65歳以上は熱中症を発症しやすく重症化もしやすいのですが、64歳未満も無関係な話ではありません。救急搬送されている人は、高齢者が半数で多いのですが36%は18~64歳、15%は7~17歳と、比較的体力がある世代です。

熱中症は、気温や湿度が高く、日差しや照り返しが強い日に発生することが多数。体温が上がったり、顔が赤い・熱いにもかかわらず、汗をあまりかいていなかったり、頭痛がする時には注意が必要です。

重症度は、症状が軽いものから順にⅠ~Ⅲ度に分類されます。Ⅰ度では、主にめまいや立ちくらみ、こむら返り、手足のしびれといった症状が出てきます。Ⅱ度になると、吐き気、嘔吐、倦怠感が出てきます。それに加えて、意識障害やけいれん等を起こす場合はⅢ度と考えられます。

こういった症状があった場合、「熱中症環境保健マニュアル2018」では、涼しい場所に移動し、着衣をゆるめて風通しを良くしたうえで、意識がはっきりしていて自分で水分を飲めるようであれば、スポーツドリンク等をたくさん飲ませ、自分で水分が飲めなかったり意識がもうろうとしているようであれば、すぐに医療機関に搬送することを指示しています。

日ごろから汗をかく習慣を身につけておくことや、こまめに水分を補給するなどの予防が大切です。

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