はじめに

今年最大の政治イベントともいえる米中間選挙を無難に通過し、波乱展開を辿った2018年相場も終盤戦を迎えつつあります。2月の米株急落や10月の日経平均27年ぶり高値からの3,000円超えの大幅下落など不安定な場面も少なくなかった1年でしたが、残りの2ヵ月の展開をイメージすべく過去の値動きとの比較からアプローチしてみたいと思います。


2014年相場をなぞる展開

大発会から10月末までの日足データについて、過去68年間との相関係数を計算してみると最も高い数値を示すのは2014年となります(下図)。

実際に日足を合わせてみても酷似した値動きを辿っていることがわかりますが、年初高値からの下押しや、夏場の膠着商状、さらには10月の波乱展開も含め、要所要所で2014年相場をなぞるかのような値動きを継続しています(下図)。

多少意外感もあった10月末からの急反発も2014年とほぼ同様のタイミングで発生しており、このグラフからは年末高への期待も十分に感じさせる状況と言えそうです。ちなみにこの年以外で相関係数の高かった年は1995年、1979年などが挙げられますが、いずれも前半の値動きが冴えず年央近辺で安値を付けた後、年末高へ向かいました。例年11~12月については株価が上昇しやすいアノマリー(市場のくせ)が知られています、その可能性がより高いパターンを辿っていると見ることができます。

大統領選前年2019年への期待も

さらに、4年前の2014年は言うまでもなく前回の米中間選挙の年に当たります。当時は米国による過激派組織「イスラム国」(IS)への空爆開始などを嫌気して10月に相場が急失速しましたが、日銀の大規模緩和第2弾の発動(10月31日)、11月4日米中間選挙を無難通過するなか、日本・米国ともに株価は急回復。結局、ともに年初来高値水準で1年を終えています。

実はこの中間選挙と株価動向の関係にも明確なパターンが存在します。俗に「大統領サイクル」と呼ばれますが、4年ごとに行われる米大統領選挙を巡り、米株価は4年周期で似た展開を辿ってきました。過去10回(40年間)の平均を見てみると、大統領選や中間選挙の実施される年は秋に下押し、その翌年に向けては株価が上昇しやすい格好となっています。(下図)

4年サイクルのなかでも、とくに中間選挙後のパフォーマンスが優れていることが分かりますが、次の大統領選に向けてより景気に配慮した政策を推進するなどの背景が指摘されています。

今回に当てはめて考えてみると、2018年は中間選挙対策も含めてトランプ政権の通商政策が先鋭化、特に中国との貿易摩擦の激化が株価波乱をもたらした1年となりました。足元でも両国の交渉の行方は予断を許さない状況にはありますが、月末の米中首脳会談に向けて双方の歩み寄りが窺われることは安心材料と言えそうです。

トランプ大統領はすでに追加減税策に言及しているうえ、インフラ投資の推進にも根強い期待が継続しています。2020年の大統領再選を狙ううえで好景気を維持することに力を注ぐと見られるなか、例年どおりのパターンを辿る可能性は高そうです。日経平均も2014年の値動きを後追いして年末高が実現し、来年も上昇トレンドが持続することを期待しています。

(文:岩井コスモ証券 投資調査部 林卓郎)

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