はじめに
Aさん(50歳男性)は、現在怒りに震えています。ある日、家に帰ってみると妻が3歳の子供を放置し、「出ていきます」と書き置きを残して去ってしまったのです。
突然子供と2人の生活を強いられたAさんは、母の協力を仰ぎ、必死に子育てと仕事を両立させます。子供は母親がいないことに戸惑いを見せることも多く、申し訳ない気持ちでいっぱいだったそう。
妻が別の男と暮らしていた
子供の手がかからなくなってきたある日、知人から「妻が別の男とある場所で暮らしている」と情報が入りました。見に行ってみると、そこにはまるで夫婦のように振る舞う妻の姿が。
自分と子供を捨て、別の男に走った妻に未練はありませんが、苦労を強いられたこと、子供に寂しい思いをさせたことについては腹立たしく思っており、慰謝料を請求したいと考えています。
このような場合、夫から妻に慰謝料を請求することは可能なのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。
慰謝料の請求は可能なのか?
理崎弁護士:「夫が妻に対して慰謝料を請求する理由としては、夫婦の同居義務違反が考えられます。法律上、夫婦は同居して生活しなければならない義務を負っています(民法752条)。
妻がこの義務に違反して、正当な理由もなく長期間別居している場合には、夫婦の同居義務違反として、慰謝料の対象となる可能性があります。
正当な理由とは、単身赴任による別居や、配偶者の暴力から逃れるための別居などですが、本件では、妻は子どもを置いて突然蒸発したということなので、別居には正当な理由はないと思います。」
長時間の別居は離婚事由にもなる
理崎弁護士:「また、正当な理由がない長期間の別居は、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)あるいは「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)として、離婚理由にもなり得ますので、妻の別居が理由で夫婦が離婚することになった場合、妻は離婚による慰謝料を支払う義務も負うことになります。
さらに、夫婦の収入にもよりますが、妻の別居中、夫が子の養育監護をしていますので、原則として、夫は、妻に対して婚姻費用の請求をすることができます。
もし夫婦が離婚して、夫が子の親権者になった場合には、夫は、妻に対して子の養育費を請求することができます。」
迷わず行動を
慰謝料と聞くと妻から夫に請求するものというイメージがあり、男性は尻込みするケースもあるようですが、Aさんのように相手の蒸発という自分勝手な行動に耐え頑張ってきたのなら、やはりもらうものはもらうべきでしょう!
もちろん女性もですが、結婚相手が蒸発してしまった場合は、弁護士のアドバイスなどを聞きながら、行動に出ましょう。
取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。弁護士登録以来、離婚や不倫問題を中心に取り扱っており、多数の解決実績がある)
取材・文:櫻井哲夫