はじめに
来月からは新学年がスタート。真新しいランドセルを背負った新小学1年生の姿をあちこちで見かけることになりそうですが、小売りの現場では早くも2020年春入学の子供をターゲットにしたランドセル商戦が火ぶたを切っています。
各社がしのぎを削る中、イオンがこの春から投入したのは、忘れ物の防止に照準を当てた新商品。いったい、どんな工夫が施されていて、その背後にはどのような戦略が隠されているのでしょうか。
8つの工夫で忘れ物を回避
今年は最大で約100種類を取り扱うという、イオンのプライベートブランド(PB)ランドセル。目玉は、ベネッセコーポレーションと共同開発した「新わすれナイン」という商品です。
名前に「ナイン」とあることからもわかるように、忘れ物をしにくくする8つの工夫に加えて、全方位反射板を付けて安全を守る工夫、合計9つの工夫を施しているのが特徴。本体価格は6万5,000円(税別、以下同)で、3,000円を上乗せすれば、荷物が多い時も手ぶらで通学できるサイドポケットが付いてきます。
忘れ物をしにくくする工夫のポイントは、「収納場所を見える化」したこと。筆箱や自宅の鍵、携帯電話、プリント類など、それぞれの専用ポケットを配置し、定位置を決めることで、入れ忘れたものがすぐに気づくという仕掛けです。
8つの工夫で忘れ物をしにくくしている「新わすれナイン」
「8つの工夫で忘れ物を防ぎ、毎日の持ち物準備が楽しくなり、お子さんの自立をサポートすることができます」。イオンリテールの森下陽介キッズ商品部長は、商品の売りをこう説明します。
共働き家庭の増加で忘れ物問題が深刻化
イオンが新わすれナインを投入した背景にあるのが、子供たちが小学校に持っていく持ち物が増えているという事情です。脱ゆとり教育の影響で教科書のページ数が増えているほか、放課後に塾に通う子供も増加しています。
その一方で、両親が共働きしている家庭は増えており、子供が忘れ物をしたとしても、親が学校まで持っていくことが難しくなっています。その結果、忘れ物をした子供が自信を喪失する一因にもなっているといいます。
ベネッセが小学生の子供がいる自社会員1,023人を対象に実施したアンケートでは、5割の子供が月に数回、忘れ物をしていることがわかりました。また、6割の親が子供の持ち物準備を手伝っているという結果も出てきました。
こうした状況を踏まえて、持ち物専用ポケットを付けることで子供が1人で持ち物を準備する習慣をつけるとともに、ランドセルの中がきれいに整理されやすくし、共働きの両親も安心できる商品を企画したというわけです。