はじめに
新価格帯の投入で3層構造に
今年のランドセル商戦では、前年比で10%の販売増を目指すというイオン。新わすれナイン以外にも戦略を張りめぐらせています。
その1つが、ドリームエリアという会社が提供する「みもり」の販売です。このサービスはGPSと音声で子供の安全確保をサポートするもの。危険エリアを設定しておくと、子供がそこに入った時に音声で注意するほか、「マチコミアプリ」と連動し、不審者情報をキャッチして注意喚起する機能などが付いています。
「みもり」の月額料金はイオンで購入すれば割引に
ドリームエリアの調査によると、2人に1人の親が通学路に危険を感じており、9割の親が「ITを利用した見守りの必要性を感じている」といいます。みもりには上記のような機能のほかにも、トラブル発生時に通知ボタンを押すと、親のスマートフォンに子供の現在地を知らせる機能が付いています。
本体価格は8,800円。イオンで購入すれば、通常なら680円が必要な月額料金が480円で利用可能になります。
今年は価格体系にもテコ入れをします。新たに投入した「ミラクルin」は、本体価格を5万円台を切る水準に設定。13.5センチメートルの大マチと大容量でありながら、丈夫でコストパフォーマンスを重視した商品設計にしています。
これまでイオンのPBランドセルは6万円台と3万円台という2つのヤマがありましたが、ミラクルinの投入によって、ナショナルブランド(NB)の中心価格帯である5万~6万円台を開拓。「3層構造で戦っていきたい」と、森下部長は意気込みます。
消費増税で販売ピークは前倒し?
イオンでは、2年前から通年でのランドセル販売を実施しています。4~7月の販売数は年間の3割を超えており、同期間の販売数は3年間で3倍に増えているそうです。
ランドセルは、祖父母・両親・子供の3世代で買い物に来て、何度も下見を重ねた末に購入する商品。入学前年の春休みから検討を始め、ゴールデンウィークやお盆に購入するという人が多く、人気商品は早めに完売してしまうケースが増えているといいます。
年々早期化傾向が強まっているランドセル商戦。今年はさらに前倒しも?
特に今年は10月の消費増税を控え、例年よりも販売のピークが前倒しになることが予想されます。「10月よりも前のお渡しでないと、消費税率が8%になりません。9月中にお渡しできるよう、生産体制を整えていますが、受注生産なので限界もあります。早めの購入をお勧めしたい」(森下部長)。
昨年は前年比で3~5%増となったイオンのランドセル商戦。今年は同10%増と、昨年を上回る伸びを想定しています。中心価格帯は4万円台と、前年からほぼ横ばいの計画。新商品の投入や価格体系の見直しによって、販売数量を伸ばしていく狙いです。
その中核を担うのが、忘れ物に照準を当てた新わすれナイン。ベネッセの知見を得て、潜在需要を掘り起こすことができるでしょうか。